Amazonは既に音楽ストリーミングビジネスの将来を見極めたのか?

Amazonのジェフ・ベゾス(Photo by John Locher/AP/Shutterstock)


OC&Cのレポートには、音楽ストリーミングサービス(とパートナーである各レーベル)が今後、消費者からの収入を最大化するために必要な多くのヒントが含まれている。例えば、非ユーザー向けにパーティーやバーベキューの時だけストリーミングサービスを楽しむための「1日パス」を発行したり、ニッチなジャンルを「スペシャルプラン」として特別価格で提供するなどだ。スペシャルプランでは例えば、コアなジャズ・ファンがお気に入りのアーティストのフルカタログを楽しめたり、ジャズ専門の特別なコンテンツを提供したりする。またアーティスト別のスペシャルプランでは、例えばダフト・パンクの熱烈なファンがチケットを先行予約できたり、限定グッズを購入できる。これらは全て、特別な月額料金の追加で提供すればよい。

しかしOC&Cのリサーチからは、あるひとつの企業のみが前出の事項を既に実現している、という明白な事実が読み取れる。その企業とは他ならぬAmazonだ。

OC&Cによるレポートは、音楽業界の提供する「プレミアム」ストリーミング・オプションの価格設定は挑戦的すぎると主張しているが、これは注目すべき点だ。オンデマンドビデオ、ジム、ホテルなど他の市場では、「プレミアム」オプションの理想的な価格設定は、「スタンダード」オプションに40〜60%プラスした金額だとされている。ところが、Deezer HiFiやTidal HiFi等のHD音質を提供する最近の音楽ストリーミングにおける「プレミアム」オプションは、月額19.99ドルという価格設定がされている。業界標準の9.99ドルというプライスポイントに100%プラスした金額だ。

ところが2019年9月、Amazonは、月額14.99ドルという価格設定でHD音楽ストリーミングサービスに参入した。一般的な有料音楽ストリーミングサービスの月額料金に50%上乗せした金額で、競合他社よりも安い価格設定になっている。

ストリーミングサービスのプランにもっとバリエーションを持たせた方が良いと提唱してきた人たちは以前から、低価格の限定カタログや単一デバイス限定のオプションなど、非ヘヴィユーザー向けのより安価で多様な価格設定を提供すべきだと主張してきた。ここでもまた、それらを実現しているのがAmazonだ。Amazon Music Unlimitedサービスでは、1台のEchoに限定したプランを月額わずか3.99ドルで提供している。さらにAmazon Primeのユーザーは、追加料金なしにPrime Musicを通じて200万曲へアクセスできるのだ。

現時点で実際に、Amazonの提供するストリーミングサービスには、無料(非オンデマンド)から14.99ドルのHDプランまで、トータル5種類もの価格設定が用意されている。おそらく最も論議を呼びそうなのは、SpotifyやApple Musicが月9.99ドルで提供している全カタログへのアクセスと特典を、月7.99ドルで提供する既存のAmazon Prime会員向けプランだろう。(業界内の情報筋によると、Amazonは既存会員の満足度を向上させつつ競合他社よりも安い価格設定を実現するために、この7.99ドルのプランで音楽業界へ貢献しようとしているのだという。)

前出のニューヨーク・タイムズ紙のインタヴューで音楽ストリーミングサービスの類似性を強く批判したジミー・アイオヴィーンは、強く釘を刺している。「ある商品やサービスがコモディティ化すると、次は価格戦争になる」と彼は指摘する。「同じものが安く手に入るようになると、別の業者が参入してきてさらに価格を下げるだろう。」

ジェフ・ベゾスが投稿した朝食のパンケーキのエピソードを読むと、なぜか彼がAlexaに向かってニヤリとしている姿が目に浮かぶ。

Translated by Smokva Tokyo

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