Gラヴはなぜキャリア25年を経て、新境地を切り拓くことができたのか?

Gラヴ(Courtesy of ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル)

ヒップホップとブルースを融合させたスタイル「ラグ・モップ」を生み出し、サーフ・ミュージックを牽引するGラヴが、ニューアルバム『ザ・ジュース』をリリースした。グラミー賞4回受賞のブルースマン、ケブ・モとの共同プロデュースで制作された同作をひっさげて、4月には盟友スペシャル・ソースを率いての来日公演も決定済み。Gラヴの最新モードを、音楽ライターの山口智男が解説する。

昨年5月にデビューから25周年を迎えたことが一区切りになったんじゃないか、と思わせる新境地を打ち出した新作『ザ・ジュース』がGラヴ(Vo,Gt)から届けられた。Gラヴ&スペシャル・ソース名義でリリースした前作『ラヴ・セイヴス・ザ・デイ』(2016年)から約4年ぶり。今回は、ソロ名義のリリースとなる。

デビューから10年過ぎた頃から、彼の活動が、自らフロントマンを務めるトリオ、Gラヴ&スペシャル・ソースだけにこだわらないものになっていったことは、ファンならご存じだろう。たとえば、『フィクスィン・トゥ・ダイ』(2011年)で共演したノース・カロライナ州のフォーク・ロック・バンド、アヴェット・ブラザーズもそうだが、そんなふうに新たに出会った仲間たちも巻き込みながら、Gラヴの活動は年々、自由度を増していき、そんな活動の中からスペシャル・ソース名義のアルバムとともに『ハッスル』(2004年)、『レモネード』(2006年)、前述した『フィクスィン・トゥ・ダイ』というソロ名義のアルバムが生まれていった。

もっとも、ソロ名義のアルバムでもスペシャル・ソースのメンバー――ジミー・プレスコット(Ba)、ジェフリー・クレメンズ(Dr)が参加していることもあるから、ソロとスペシャル・ソース、その境はファジーなのだと思うが、4作目のソロ・アルバムとなる『ザ・ジュース』には興味深いことにスペシャル・ソースのメンバーは参加していない。それは今回、プロデュースを担当したケブ・モがこれまでとは違う作品にしたいと考え、レコーディングの参加メンバーを、ケブ・モ人脈のミュージシャンで固めたからなのだが、ケブ・モにプロデュースを任せたとき、Gラヴも「ケブ兄さん、それなら俺のことを好きに料理しちゃってください」と腹を括ったようだ。

「(最初は)“デュオ・アルバムを作らないか?”って話になったんだけど、ケブは“ちょうどタジ・マハールのアルバムを手掛けたところだから、俺がプロデュースをやるよ”と言ったんだ。ぶっちゃけ、プロデューサーとしてケブに何を期待したらいいのかわからなかったけど、俺はチャンスに賭けてみたかった。そして、俺が得たものは、望んでいたことを遙かに超えていたんだ」(以下の発言は筆者によるオフィシャル・インタビューより)




ケブ・モによるプロデユースと聞いて、「おおっ」、あるいは「ほぉ~」とちょっと身を乗り出した読者は、昔からのGラヴのファンか、かなりのブルースマニア、あるいはその両方だろう。そして、Gラヴとケブ・モの共演と聞き、かつて2人がレーベルメイトだったことに加え、2人のデビューが黒人音楽専門の名門レーベル、オーケーの25年ぶりの復活を飾る鳴り物入りのものだったことを思い出したに違いない。

「俺たちは一緒に契約を結んだんだ」と、それぞれ『Gラヴ&スペシャル・ソース』『ケブ・モ』というセルフタイトルのアルバムでデビューした94年当時のことを振り返るGラヴとケブ・モはレーベルメイトということで、デビュー直後はよく一緒にツアーしたという。

しかし、やがてデルタ・ブルースにラップ/ヒップホップを掛け合わせたラグモップなる唯一無二のスタイルが歓迎されると同時にベン・ハーパー、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン、ベックとともに新世代ブルース四天王に数えられたことで、オルタナ・ロックのファンにもアピールしていったGラヴと、モダンなブルースをアコースティックな表現を基調に奏でながら、ブルースの王道を歩き始めたケブ・モの活動がその後、交わることはなかった。

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