tricotが結成10年目で到達した新たなる高み、その構築美に迫る

「秘蜜」で見せた新境地

─スタジオのセッションと、DAWソフトでのポストプロダクションを繰り返しながら作っていく感じですか?

中嶋:そうです。DAWソフトは携帯にインストールしてあるガレバン(GarageBand)を使っているんですけど、みんながスタジオ入りする1時間前に私一人がまずスタジオに入って前回のスタジオ音源に(GarageBandで)歌を入れて、そのデータをメールでメンバーに送り、「この続きを、このあとスタジオでやりましょう」みたいな。

─最初にDAWでデモを作ってバンドでブラッシュアップしたり、スタジオでセッションしながら仕上げていったりするバンドは多いと思うんですけど、そうやってリレー方式でアレンジを詰めていくのは結構珍しいパターンかもしれないですね。

中嶋:確かに。アナログなんだかデジタルなんだかよく分からないですよね(笑)。私は結構、コツコツ作業するのも好きなんです。みんなでやると、ちょっと気を使ってしまうというか。みんなの時間を使ってしまうのも悪いなと思うので、こういうやり方が向いているのだと思います。

吉田:ドラムに関しては、ブレイクビーツっぽいノリを出したいなと思って、人じゃなくて機械のつもりで叩いてましたね。ネオソウルっぽいフレーズだけど、音色はそうじゃない感じ……打ち込み間違えたような雰囲気が出たらいいなと思いました(笑)。全体的にあまり今っぽくないドラムの音色に、今回は敢えてしているんです。ぱっと聴きは気づかないかも知れないけど、よく聞くと「なんかおかしいぞ?」みたいな。

─そして、今回もキダさんのフリーキーなギターが満載です。こうしたフレーズはいつもどんなふうに思いつくのですか?

キダ:Twitterで呟くくらいの軽いノリで、「ちょっと一言だけ」みたいなフレーズを思いついたらボイスメモにどんどんストックしていて。曲を作るときは、その中から良さそうなものを広げていく感じです。ただ、自分一人で最初から最後までどうにかすることはしてなくて。それ(ギターのフレーズ)を聴いて、みんなが思いついたアレンジをどんどん入れて欲しいんです。なので、セッションで作る方が、自分は向いているなと思っています。

中嶋:私は「秘蜜」のアレンジが好きですね。ギターもベースもドラムも面白いし、tricotの曲としてはちょっと新しさもあって。展開でバーンとやっちゃってるのはtricotっぽいなと思うんですけど(笑)、そこから開けていく展開がすごく気に入っています。その前のサビと、それ以降のサビが全く別物のアレンジというか。メロは同じなのに、部屋の中と外くらい景色が変わっているんですよね。

ヒロミ:「ワンシーズン」も「秘蜜」に通じるところがあるかも知れない。ベースと歌から始まるのも今までになかったパターンで新鮮やし、全体的な空気感もちょっとダークな感じが気に入っています。

─今年はバンド結成10周年という節目の年でもありますが、最後にこれからの展望をお聞かせください。

中嶋:たまたまこの時期に合わせてメジャーデビューしたわけではないんですけど、その前に吉田さんが入って4人体制になり、海外にも一通り行って、日本も47都道府県をこのメンバーで回れたし、バンドも周囲の環境も固まりつつ、どんどん広がっている感じがします。なので2020年は、この先の活動も楽しみになるようなスタートを切れるといいなと思っています。




<INFORMATION>


『真っ黒』
tricot
8902ECORDS
1月29日発売



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