BiSHモモコグミカンパニー、いしわたり淳治に作詞とグループ論を学ぶ

いしわたり淳治が理想とする生き方

ー音楽はどういうのを聴いてきたんですか?

いしわたり:バンドを始めた時はみんなと同じでオアシスを聴いてました。SUPERCARが解散して1人でプロデューサーや作詞家をやるようになって、勉強じゃないけどたくさんの音楽を知識として入れようとしたのかも。たぶんアーティストの時は自分が興味があるものをカッコよく作れれば、それがゴールだからいいと思うんですけど、1人になると誰かに依頼されても応える技術や知識がないといけない。興味のあることだけだと、やれることがものすごく少なくなってしまうので。自分のお店の品揃えを充実させておくって感じかな。昭和の歌謡曲もたくさん聴いたし、有名な歌の歌詞を写経のように文字に起こしてたこともあるし。



ー今はギターは弾いていないんですか?

いしわたり:弾いてない。だから指先がふやふやで(笑)。

ーバンドを辞めた時、またギターを弾こうとは思わなかったんですか?

いしわたり:あまり思わなかったです。楽器が向いていないというか、自分が楽器を練習して手に入る技術なんて、それぐらい弾ける人は世の中にたくさんいるレベルだと予想がついたので、自分にしかやれないことを伸ばしたほうがいいだろうなと。

ーいしわたりさんはどんなお父さんになりたいですか?

いしわたり:別に何も目指していないですよ(笑)。

ー私、親になる自分が想像つかない。子供育てるの絶対に無理だろって思っちゃうんです。

いしわたり:いやいや、決めるの早くない? そんなに早く決めなくても(笑)。

ー自分1人で生きるだけでも大変すぎて……。さっき、お父さんをしている時が一番楽しいっておっしゃっていたので。

いしわたり:楽しいですよ。自分は幸いにも家で仕事ができるから、仕事部屋の扉さえ開けてしまえば、そこに家族がいるので。一回外に出たら夜中まで帰ってこないお父さんとは違う。それが子供にとっていい方向に作用したらいいなとは思っています。

ー作詞の仕事を通じてどうなりたいと考えてますか?

いしわたり:どうなりたいんだろう。僕がずっと言っているのは、ツチノコになりたいって思ってる。存在は知っているけど、見た人はいないみたいな。夢のある存在というか(笑)。

ーカッコいいですね。

いしわたり:カッコいいのかな? あと、自分がやれる量なんてたかが知れているので、世の中に何かを還元できるようにはなりたいなと思います。

ー今日会うまで、私にとってツチノコでした。

いしわたり:そうでしょ(笑)。だから、あまりのこのこ出て行かないほうがいい。そのほうが夢が叶うんじゃないかなって思っています。

=あとがき=

いしわたりさんとのお話でわたしが一番印象的だったのが、「手応えのある生活」というワードです。作詞家は普段の暮らしをちゃんとしていた方が、でてくる言葉がちゃんと“ここ”にある感じがする、といしわたりさんはおっしゃっていました。歌詞は今を生きてる人たちが聞く言葉だから、書く人も今を生きている人間がいい、ということかもしれません。私が普段ステージに立って表にでているときには一見関係なさそうな、1人の人間としての生活、普段自分が生きていく中で感じるものマイナスもプラスも無駄じゃないと言われた気がして少し安心しました。そのときしか出なかった言葉、今しか出ない言葉、一つひとつの言葉をこれからも大切にして、人間として生きていきたいですね。


いしわたり淳治
青森県出身。1997年にロックバンドSUPERCARのメンバーとしてデビュー。アルバム7枚、シングル15枚を発表し、全曲の作詞とギターを担当。2005年のバンド解散後は、作詞家、音楽プロデューサーとして活動するかたわら、雑誌等への執筆もおこなっている。ソニー・ミュージックエンタテインメント REDプロジェクトルーム所属。
http://kihon.stablo.jp/

モモコグミカンパニー(BiSH)
https://twitter.com/gumi_bish
2015年3月、BiSHのメンバーとして活動を開始。2016年5月のシングル「DEADMAN」で早くもメジャーデビュー。2017年12月には、結成からわずか3年で『ミュージックステーション』に出演し、“楽器を持たないパンクバンド”として強烈な個性を見せつける。2018年12月22日には幕張メッセ9・10・11ホールにて1万7,000人を動員した単独ライブ「BRiNG iCiNG SHiT HORSE TOUR FiNAL "THE NUDE”」を開催した。2019年7月に全国ツアー「LiFE is COMEDY TOUR」を実施。7月3日には最新アルバム『CARROTS and STiCKS』をリリース、9月23日には大阪城ホールワンマン『And yet BiSH moves.』、10月からは全国19カ所23公演をバンド編成でまわるホールツアー「NEW HATEFUL KiND TOUR」が決定。最新シングル「KiND PEOPLE / リズム」を11月6日にリリース。2020年1月15日にはLive Blue-ray / DVD『And yet BiSH moves.』を発売した。現在BiSHのメンバーはモモコグミカンパニーの他、アイナ・ジ・エンド、セントチヒロ・チッチ、ハシヤスメ・アツコ、リンリン、アユニ・Dの6人。
https://www.bish.tokyo/

Edited by Takuro Ueno(Rolling Stone Japan)

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE