BiSHモモコグミカンパニー、いしわたり淳治に作詞とグループ論を学ぶ

いしわたり淳治は周りから見たらどんな人?

ーいしわたりさんは周りからどんな人だって言われますか?

いしわたり:わからない。どうなんですかね。誰にどう思われているとか、あまり気にしないんですよ。もっと気にしたほうがいいってくらい。

ーエゴサーチとかもしないんですか?

いしわたり:一度もしたことがないですね。誰に何を言われているのかまったく興味がない。ただ単に図太いだけじゃないですか。

ーその図太さみたいなものはどこから来てるんですか?

いしわたり:親の教育の賜物なのかな(笑)。何なんでしょうね。例えば曲を頼まれて作っても、自分のものですって感覚があまりなくて。いいと思った人が頼みたいと思ってくれた時に不便だろうから、全部同じ名前でクレジットを残してリリースしてもらうけど、別に作詞者のクレジットを毎回変えたって別にいいんだよね。いい曲がこの世に出ればいいなと思うだけで。特に手柄が欲しくてやっていないのかもしれない。

ーいしわたりさんが書いた小説&エッセイ『うれしい悲鳴を上げてくれ』を読んでいて、「第一印象を終わらせろ」っていう章が一番好きなんですけど、自分が好きだと思っていた食べ物を、よく噛んでずっと口の中に入れていたら、味が変わって本当は好きじゃないんじゃないかとか。そういう話にすごく共感して。だから今回お会いするのも、逆に今まで好きだと思っていたものが、ちゃんと話してみたら好きじゃないかもしれないと思うのが怖かったんです。

いしわたり:それ、さっきのメンバーの話と通じるものがある(笑)。裏は知りたくない。僕もそれは一緒です。だから、「隣の店で今ミック・ジャガーがご飯食べてるよ」って言われても絶対に行かない。そんなオフの状態を見たくない。

ーいしわたりさんとはずっと会いたかったし、お話ししてみたかったし、緊張して今日ここまで来たんです。本当は会いたくないのかもしれないと思ったり。

いしわたり:その感覚は非常によくわかりますね。

ー「世の中にいい曲がたくさん生まれてほしい」とおっしゃってましたけど、それは自分で書いたものじゃなくてもいいんですか。

いしわたり:もちろん。だって自分がどんなに頑張ったって、1カ月に書ける量なんてたかが知れているので、だったらみんながスキルアップしてくれたほうがいい。

ー大人になってからそういう考え方になったんでしょうか?

いしわたり:大人になってからですよ、もちろん。

ー私はまだ若いからかもしれないですけど、今はまだ“自分が自分が”というモードで、得意なことは自分でやりたい。



いしわたり:それで正しいと思います。究極を言えば、自分が20代のアーティストの曲を書くとして、もちろん頑張るしその人に響くものを想像して寄り添って書くけれど、その人の内側には絶対に行けないから。単純に10代の人が、自分が持っているようなスキルやテクニックを持ったら何を作るんだろう?と興味がある感じかな。

ー面白いですね。

いしわたり:だって、せっかくいいものを持っているのに、ただ感情を吐き出すだけで終わってしまったり、形として伝わりにくいものになったりしたら残念じゃないですか。

ー歌詞を書く時に、テクニックとして一番心がけていることは何ですか? 私は、テクニックとちゃんと言葉にできるようなものがないんですよ。

いしわたり:歌詞はどこから書いています?

ーAメロから書きます。

いしわたり:じゃあサビから書くといいと思いますよ。本来、曲の中で一番伝えたいことはサビだから言葉が伸びやかに入っていたほうがいい。サビをゆったり伸びやかに書いて、次にAメロに戻って、Bメロは中間管理職のように間に挟まれて、多少わちゃちゃしてもいいんですよ。なぜかというと「Bメロから歌ってごらん」と言って歌える人って少ないから。それくらいBメロって流れの中にあるもので、全体の中では比較的重要度が低いんですよ。サビを映えるようにする、ジャンプ台の役割というか。だからまず、書きたいことをサビで伸びやかに書いてしまう。それに結びつく、1分なら1分で駆け上がれる一番遠いところからAメロを書き始める。



ーおおー!

いしわたり:そうするといい歌詞になっていくと思います。いい歌詞というか、広がりというか、強さを持った歌になっていく。今の書き方だと、Aメロで言いたいことが終わったらもったいないしね。テクニックってたぶんそういう感じのことだと思う。

ーそういうのって誰かから教わったんですか?

いしわたり:いや、独学というか何となく思ったこと。別にそれが正解だとも思わないし、そうじゃないけどいい曲もたくさんあるので。みんなも1回作ってみるといいと思います。発見があるので。

ーいしわたりさんが“この人いい歌詞書くな”って思う人は?

いしわたり:野田洋次郎くん(RADWIMPS)です。ずば抜けていると思います。あんなに書けたら楽しいでしょうし。

ー「愛にできることはまだあるかい」。



いしわたり:粋なこと言うじゃない。絶対にあると思っているでしょ。歌っている時に絶対にあると思っているのに「まだあるかい?」って、聞くんだもん。ずるいよね(笑)。

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