2020年アカデミー賞、今年の賞レースみどころは? 『ジョーカー』が最多ノミネート

『ジョーカー』、『1917 命をかけた伝令』、『パラサイト 半地下の家族』が第92回アカデミー賞の最多ノミネーションを獲得。(Photo by Wilson Webb/Netflix; Andrew Cooper/Columbia Pictures; CJ Entertainment)

第92回アカデミー賞ノミネート作品が発表された。最多ノミネートを果たしたのは『ジョーカー』で、『1917 命をかけた伝令』、『パラサイト 半地下の家族』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』と『マリッジ・ストーリー』も主要部門で複数のノミネーションを獲得している。

『パラサイト 半地下の家族』、『ジョーカー』、『1917 命をかけた伝令』が米現地時間2月9日に開催される第92回アカデミー賞で作品賞をはじめとする複数の部門で競い合うことになった。

上記3作品に加え、作品賞には『フォードvsフェラーリ』、『アイリッシュマン』、『ジョジョ・ラビット』、『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』、『マリッジ・ストーリー』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』がノミネートされた。

今年の賞レースをリードするのは、合計11部門でのノミネートを果たした『ジョーカー』だ。ノミネーションには、監督賞(トッド・フィリップス監督)、主演男優賞(ホアキン・フェニックス)、脚色賞(トッド・フィリップスとスコット・シルバー)が含まれる。それに対し、『1917 命をかけた伝令』と『アイリッシュマン』はともに10部門でのノミネーションを獲得。『1917 命をかけた伝令』のサム・メンデス監督と『アイリッシュマン』のマーティン・スコセッシ監督が監督賞にノミネートされる一方、ともに『アイリッシュマン』に出演したアル・パチーノとジョー・ペシが助演男優賞を競い合う。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は、10部門にノミネートされる結果となった。レオナルド・ディカプリオが主演男優賞、ブラッド・ピットが助演男優賞にノミネートされるなか、クエンティン・タランティーノ監督は監督賞と脚本賞の両方へのノミネーションを獲得。同様に高評価を得たのは『パラサイト 半地下の家族』で、6部門にノミネート。同作は、作品賞に加えて国際長編映画賞にもノミネートされ、ポン・ジュノ監督も監督賞と脚本賞にノミネートされている。

『アイリッシュマン』のスコセッシ、『ジョーカー』のフィリップス、『1917 命をかけた伝令』のメンデス、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のタランティーノ、『パラサイト 半地下の家族』のジュノと、監督賞にノミネートされた全員が2年連続で男性であるのは特筆に値する。

主演男優賞部門では、第77回ゴールデン・グローブ賞の主演男優賞を受賞した『ジョーカー』のホアキン・フェニックスがダブル受賞を狙いながらも、『Pain and Glory(原題)』のアントニオ・バンデラス、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のディカプリオ、『マリッジ・ストーリー』のアダム・ドライバー、『2人のローマ教皇』のジョナサン・プライスと競い合う。対する主演女優賞は、『ハリエット』のシンシア・エリボ、『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』のシアーシャ・ローナン、『スキャンダル』のシャーリーズ・セロン、『ジュディ 虹の彼方に』のレニー・ゼルウィガー、『マリッジ・ストーリー』のスカーレット・ヨハンソンのバトルとなる。

スカーレット・ヨハンソンは『ジョジョ・ラビット』で助演女優賞にもノミネートされるという、レアなダブルノミネーションを達成。助演女優賞部門では、『リチャード・ジュエル』のキャシー・ベイツ、『マリッジ・ストーリー』のローラ・ダーン、『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』のフローレンス・ピュー、『スキャンダル』のマーゴット・ロビーと競い合う。助演男優賞部門には、『アイリッシュマン』に出演したパチーノとペシ、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のピット、『A Beautiful Day in the Neighborhood(原題)』のトム・ハンクス、『2人のローマ教皇』のアンソニー・ホプキンスが名を連ねている。

音楽に関しては、『ジョーカー』のスコアを手がけたチェロ奏者・作曲家のヒドゥル・グドナドッティルが第77回ゴールデン・グローブ賞の作曲賞受賞に続き、アカデミー賞の作曲賞受賞という歴史的偉業に挑む。それに対し、ランディ・ニューマンは『マリッジ・ストーリー』で作曲賞に、『トイ・ストーリー4』の劇中歌「君のため」で歌曲賞(主題歌賞)に、とダブルでノミネーションを獲得した(歌曲賞には、『ライオン・キング』のビヨンセと『キャッツ』のテイラー・スウィフトというお馴染みのヒットメイカーたちが意外にも含まれていないことに注目)。そのほかにも『ロケットマン』からエルトン・ジョンの「(I’m Gonna) Love Me Again」、『Breakthrough(原題)』からダイアン・ウォーレンの「I’m Standing With You」、『アナと雪の女王2』からクリステン・アンダーソン=ロペスとロバート・ロペスの「イントゥ・ジ・アンノウン〜心のままに」、『ハリエット』からジョシュア・ブライアン・キャンベルとシンシア・エリボの「Stand Up」がノミネートされた。

第92回アカデミー賞ノミネート作品は以下の通り。

作品賞
『フォードvsフェラーリ』
『アイリッシュマン』
『ジョジョ・ラビット』
『ジョーカー』
『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』
『マリッジ・ストーリー』
『1917 命をかけた伝令』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
『パラサイト 半地下の家族』

主演男優賞
アントニオ・バンデラス『Pain and Glory(原題)』
レオナルド・ディカプリオ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
アダム・ドライバー『マリッジ・ストーリー』
ホアキン・フェニックス『ジョーカー』
ジョナサン・プライス『2人のローマ教皇』

主演女優賞
シンシア・エリボ『ハリエット』
スカーレット・ヨハンソン『マリッジ・ストーリー』
シアーシャ・ローナン『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』
シャーリーズ・セロン『スキャンダル』
レニー・ゼルウィガー『ジュディ 虹の彼方に』

助演男優賞
トム・ハンクス『A Beautiful Day in the Neighborhood(原題)』
アンソニー・ホプキンス『2人のローマ教皇』
アル・パチーノ『アイリッシュマン』
ジョー・ペシ『アイリッシュマン』
ブラッド・ピット『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

助演女優賞
キャシー・ベイツ『リチャード・ジュエル』
ローラ・ダーン『マリッジ・ストーリー』
スカーレット・ヨハンソン『ジョジョ・ラビット』
フローレンス・ピュー『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』
マーゴット・ロビー『スキャンダル』

監督賞
マーティン・スコセッシ『アイリッシュマン』
トッド・フィリップス『ジョーカー』
サム・メンデス『1917 命をかけた伝令』
クエンティン・タランティーノ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
ポン・ジュノ『パラサイト 半地下の家族』

脚色賞
スティーブン・ザイリアン『アイリッシュマン』
タイカ・ワイティティ『ジョジョ・ラビット』
トッド・フィリップス、スコット・シルバー『ジョーカー』
ダスティン・ダニエル・クレットン、アンドリュー・ランハム『黒い司法 0%からの奇跡』
グレタ・ガーウィグ『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』
アンソニー・マッカーテン『2人のローマ教皇』

脚本賞
ライアン・ジョンソン『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』
ノア・バームバック『マリッジ・ストーリー』
サム・メンデス、クリスティ・ウィルソン=ケアンズ『1917 命をかけた伝令』
クエンティン・タランティーノ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
ポン・ジュノ、ハン・ジヌォン『パラサイト 半地下の家族』

長編アニメーション賞
『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』
『失くした体』
『クロース』
『Missing Link(原題)』
『トイ・ストーリー4』

短編アニメーション賞
『Dcera(原題)』
『Hair Love(原題)』
『Kitbull(原題)』
『Memorable(原題)』
『Sister(原題)』

作曲賞
ヒドゥル・グドナドッティル『ジョーカー』
アレクサンドル・デスプラ『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』
ランディ・ニューマン『マリッジ・ストーリー』
トーマス・ニューマン『1917 命をかけた伝令』
ジョン・ウィリアムズ『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』

歌曲賞(主題歌賞)
ランディ・ニューマン『トイ・ストーリー4』より「君のため」
エルトン・ジョン『ロケットマン』より「(I’m Gonna) Love Me Again」
ダイアン・ウォーレン『Breakthrough(原題)』より「I’m Standing With You」
クリステン・アンダーソン=ロペス、ロバート・ロペス『アナと雪の女王2』より「イントゥ・ジ・アンノウン〜心のままに」
ジョシュア・ブライアン・キャンベル、シンシア・エリボ『ハリエット』より「Stand Up」

撮影賞
ロドリゴ・プリエト『アイリッシュマン』
ローレンス・シャー『ジョーカー』
ジェアリン・ブラシュケ『The Lighthouse(原題)』
ロジャー・ディーキンス『1917 命をかけた伝令』
ロバート・リチャードソン『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

長編ドキュメンタリー賞
『アメリカン・ファクトリー』
『The Cave(原題)』
『ブラジル 消えゆく民主主義』
『娘は戦場で生まれた』
『Honeyland(原題)』

短編ドキュメンタリー賞
『In the Absence(原題)』
『Learning to Skateboard in a Warzone(原題)』
『眠りに生きる子供たち』
『St. Louis Superman(原題)』
『Walk, Run, Cha-Cha(原題)』

短編実写映画賞
『Brotherhood(原題)』
『Nefta Football Club(原題)』
『The Neighbors’ Window(原題)』
『Saria(原題)』
『A Sister(原題)』

国際長編映画賞
『Corpus Christi(原題)』(ポーランド)
『Honeyland(原題)』(北マケドニア)
『Les Misérables(原題)』(フランス)
『Pain and Glory(原題)』(スペイン)
『パラサイト 半地下の家族』(韓国)

編集賞
『フォードvsフェラーリ』
『アイリッシュマン』
『ジョジョ・ラビット』
『ジョーカー』
『パラサイト 半地下の家族』

音響編集賞
『フォードvsフェラーリ』
『ジョーカー』
『1917 命をかけた伝令』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』

録音賞
『アド・アストラ』
『フォードvsフェラーリ』
『ジョーカー』
『1917 命をかけた伝令』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

美術賞
『アイリッシュマン』
『ジョジョ・ラビット』
『1917 命をかけた伝令』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
『パラサイト 半地下の家族』

メイクアップ&ヘアスタイリング賞
『スキャンダル』
『ジョーカー』
『ジュディ 虹の彼方に』
『マレフィセント2』
『1917 命をかけた伝令』

衣装デザイン賞
『アイリッシュマン』
『ジョジョ・ラビット』
『ジョーカー』
『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

視覚効果賞
『アベンジャーズ/エンドゲーム』
『アイリッシュマン』
『1917 命をかけた伝令』
『ライオン・キング』
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』

Translated by Shoko Natori

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