King Gnu、怒涛の2019年と『CEREMONY』の裏側を明かす

King Gnu:勢喜遊(Dr, Sampler)、常田大希(Vo, Gt)、井口理(Vo, Key)、新井和輝(Ba)(Photo by Ray Otabe, Styling by Shohei Kashima <W>)



2010年代の音楽的流れをKing Gnuの視点から語る

ーこの特集にちなんで、2010年代に関してもお伺いさせてください。「2010年代の音楽文化の流れ」と言ってもいろんな切り口があるけれど、ひとつは、ジャズやブラックミュージックが他のジャンルと接近してポップスに昇華していった流れが世界的にあったと思うんですね。King Gnuはその流れをどう体験していたのか、ということを改めて教えてほしくて。

新井 今27歳だから、僕らの10年前と言うと高校生のときなんですよね。そう考えると、そのときに聴いていた音楽がルーツになっていると思いますね。ジャズとヒップホップを新しい次元でつなげたキーマンが2010年代に出てきて、まあそれよりも前からそういう流れはもちろんあったけど、よりまた違う次元でのビートやコードのアプローチが出てきた。実際、その人たちがケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』(2015年3月)で使われて、すげえ名盤が生まれた、というのもひとつの象徴でしたよね。で、今度は僕たちがそれをルーツにしながらミュージシャンをやっているっていう。



勢喜 うん、そうだね。

ー新井さん、勢喜さんは、King Gnuが始まる前はジャズセッション界隈でも活動されていましたけど、当時って閉鎖的なものを感じたりとかしてました? なぜ今ポップスをやっているのか、という話にもつながるのかなと思うんですけど。

新井 ああ、ありましたね。閉鎖的なコミュニティっぽいとこだなと思うのは、「ジャズだね」という言葉があって。差別とまではいかないけど、「あいつはジャズだ」「あいつはジャズじゃない」みたいなことが、すごく狭いコミュニティの中で言われてたんです。特にジャズマンのあいだでそういう風に言う風潮が、まあ今でもあって。しかも、ジャズしかやらないミュージシャンに対して「ジャズだね」「ジャズじゃないよね」って言うんですよね。ジャズ以外もやるミュージシャンには言わない、みたいな、そういう言葉のニュアンスがあって。でもそれが、石若駿によって拡張されたというか。駿は間違いなくジャズドラマーなんですけど、それが彼にはもう当てはめられなくなった。ジャズ以外もやるタイプ、だけど間違いなくジャズドラマー、みたいな。ここ5年くらいで、「ジャズ」のマインドに対しての広がりが起こり始めてるんじゃないかなって思います。

ー石若さんが、その変化のキーパーソンでもある?

新井 全部が全部そうとは思わないですけど、間違いなく一端は担っていると思いますね。

勢喜 そういうところにいた人たちも、見せ方が上手くなったよね? ステージングの仕方というか、外向いて売ろうっていう気持ちが出てきているというか。時代に寄り添っているんですかね。

ーなるほど。King Gnuは2017年にスタートしているわけですが、ジャズが他ジャンルと混ざるのがひとつの「盛り上がり」ではなくもはや「定着」したところで、さらにクラシックや現代音楽の要素も入れて、しかも日本の大衆歌にまで引き上げよう、という文化的前進をやってくれたバンドだと思っているんですね。

常田 そんな感じでもないよ、ふふふ(笑)。まあ、いわゆるブラックミュージックとしてドロップしていないのが、他のバンドとは圧倒的に違うかなと思うけど。

新井 そうだね。

常田 2010年代に、ブラックミュージックが世の中を引っ張っていたのは間違いないと思いますけどね。

勢喜 うん、そうだね。

常田 いろんな形に落とし込まれてた感じかな。日本のポップスもそうですし。ヤマタツさん(山下達郎)が再評価されたりしたのもそうだし。

勢喜 確かに。そう思ったら、日本の音楽もついていってるんだなとか思ったりするけど。

常田 いや、つまり今に始まったことじゃないってことよ。ヤマタツさんの時代にも、そういう流れでやってた人がいた。別に自分たちの世代が特別なんてことはまったくないっていうくらい、俯瞰して見てます。本当にもうひとつ行こうと思ったら、それだけではそうはいかないってことだとも思うし。もう一歩俯瞰して活動しないと想像以上にはいかないというか。そういうのは各々が考えるべきだなと思いますね。



・Best Players of The Decade:King Gnuが選ぶ、2010年代のベストプレイヤー

ロバート・グラスパー
ジェイムス・ブレイク
ケンドリック・ラマー
ティグラン・ハマシアン

ロバート・グラスパーは歴史を変えた人。(勢喜)

インタビューの中でも話したように、それまでA Tribe Called Questとかもいたけど、新たな次元でジャズとヒップホップをつなげた人はまさしくグラスパーですね。(新井)

ジェイムス・ブレイクは、もう、音楽からなにからガラっとトレンドを変えた天才。(常田)

もう「ジェイムス・ブレイク以降」って言えちゃうくらいのものを生み出した。ケンドリック・ラマーも、「ケンドリック・ラマー以降」って言えちゃう。(新井)

ティグラン・ハマシアンは、僕が彼のピアノプレイに影響を受けてます。感覚的に好きというか、本当に素晴らしいし、かっこいいんだよな、あの人。(井口)

・Best Album of The Year:King Gnuが選ぶ、2019年のベストアルバム

Bon Iver 『i, i』


また今回のアルバムのために引っ越して、スタジオを建て直したという話を聞いて。前回のアルバムもスタジオを建てて、エンジニアを家族ごと引き寄せたらしいんですよね。しかもノイズを入れるためにめちゃくちゃ時間をかけたりしていて。僕らが今年こういう状況だった真っ只中に、そういうクリエイションのスタンスで作られた新譜が届いて、しかもそのスタンスがすごく伝わってくる内容で、「こうあるべきだ」って思わされました。しかも、今まで以上にボン・イヴェールのルーツとエレクトロが高い水準で混ざっていたので、素晴らしかったです。(新井)

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