中島みゆきは進化し続ける「天才」 プロデューサー瀬尾一三が語る

中島みゆき(Courtesy of Miyuki Nakajima)



中島みゆきの声・質感で意識したこと

田家:今回のアルバムのみゆきさんの声、質感っていうことで意識されてることはありますか?

瀬尾:うーん、このアルバムタイトルのように音域ですよね。自分が歌うのに一番いいところをもう一度見直してみようみたいな。全体的にこのアルバム以前とは違う印象があると思います。湿った感じはないですよね。中島さんは僕の想像できないところまで物事を考える人なので、たくさん考えて出たのが今回のアルバムだと思います。極端なことを言えば、誰でも歳を重ねていくわけじゃないですか? その中でも「20代みたいな歌い方してください」っていうファンもいますけど、20代の歌い方は20代、30代には30代のっていうことにしてくれないと、20代の歌い方してくれっていうのは無理ですよね。

田家:「離郷の歌」っていうのは、今の歌い方ですよね。

瀬尾:今しかできない歌い方っていうのをファンの方にも大事にしていただきたいんですけどね。

田家:特にそれを感じられる曲でした。

・「進化樹」
中島みゆきアルバム『CONTRALTO』全曲トレーラー


田家:これもドラマの主題歌でした、10曲目「進化樹」。1枚のアルバムに4曲もドラマ主題歌が入ってる。でもサントラアルバムでもないんですもんね。

瀬尾:主題歌に使っていただけるのはありがたいことですけど、でもそれだけにおんぶに抱っこするのも失礼な話だから、アルバムとしての統一を出したいっていうことでこの曲もとても考えましたし、他の6曲も彼女はとても考えてると思います。

田家:その中の最後の1曲が「進化樹」。ずっしりと重い曲ですね。進化樹っていう品種があると思ったんですよ。

瀬尾:彼女は本当にこういう造語を作るのも得意ですよね。家系図的なものを、人間を樹に喩えて、人類は進化したのかどうなのか? っていう問い。これもまた原点回帰なんですけど。

田家:歌ったなあっていう感じでしたね。世代が七つ八つっていうのは一つの時間の流れですし、八つ世代を遡るとどこまで戻るんだろうなあ、江戸時代とかですかね。

瀬尾:いいやもっともっと向こうでもいいんですよ、喩えですから。

田家:それだけ歳が重なって、幾億年歩いても人間は果たして進化しているんだろうかっていう大きな問いですよね。これは最初に聴いた時、どう思われました?

瀬尾:これはもう、全部含めて「中島みゆきだ!」って感じがしました。

田家:ですよね、これぞ! っていう。

瀬尾:根本的に流れる彼女の一本の筋っていうのがずれることなく、ドラマや倉本聰先生の書いた脚本にうまくマッチしてるんだと思います。だから倉本聰先生も彼女に歌を頼むんだと思いますよ。

田家:倉本聰さんもここまでのものが出てくるのかって予想できたのか聞いてみたいですね。

瀬尾:最初出来上がったときに、倉本聰先生だけに聴かせたんですよ。その時に倉本聰先生は「うーん、中島みゆきは天才だな」って言ってましたよ(笑)。

田家:みゆきさんもずっと進化してますよね。

瀬尾:そりゃそうですよ、彼女は進化し続ける天才なので。だからそこに付いていけるように、我々も精進していかないと。それができなかったら、僕なんかとっくに捨てられてると思うし、待ってくださいって言っても待ってくれないから。並走するのだけで必死ですね。待ってくださいって言いたくなる時もありますけど、口が裂けても言わないです(笑)。

田家:年が明けて2020年に今思うこと。僕らは進化し続けているのだろうか? 人間はどこから来て、どこへ向かうのだろうか? そういう永遠のテーマを感じさせる曲です。

瀬尾一三2020年part.2、70年代以降の日本の新しい音楽のアレンジャー・プロデューサーの先駆け瀬尾一三さんに特集する1カ月。先週と今週は中島みゆきさん特集、最新アルバム『CONTRALTO』全曲特集をお送りしました。今流れているのは竹内まりやさんの「静かな伝説(レジェンド)」。アルバムを作って今、改めて思うことはなんですか?

瀬尾:改めてっていうか、次はどんなのがくるのかっていうのが楽しみな反面、当面はラストツアーがうまくいくことだけが頭にいっぱいですね。

田家:昨日から始まりましたラストツアーですね、私も同行取材させていただいているはず。73歳の音楽ジャーナリストの最後の旅だと思っております。

瀬尾:じゃあ僕も72歳の最後の旅ということで。

田家:最後まで無事にっていうのは自分のことでもあります。

瀬尾:そうですよ、僕のことでもあります(笑)。

田家:さっき仰っていた「中島みゆきに付いていくのがやっとだ」ってどういうところなんですかね?

瀬尾:彼女のクリエイトする姿というか、どういうものを彼女が求めてるのか。僕が思っていることが本当に合っているのか。そこに僕がいる資格はあるかっていうとこまでも考えますね。

田家:最後のツアーはどう終わるんでしょうか。来週と再来週は瀬尾さんのコンピレーションアルバム『時代を創った名曲たち3 ~瀬尾一三作品集SUPER digest~』の全曲紹介です。それではまた来週。


<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソナリティとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

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