中島みゆきは進化し続ける「天才」 プロデューサー瀬尾一三が語る

中島みゆき(Courtesy of Miyuki Nakajima)



ナレーター的な感覚で歌っている

瀬尾:そういう意味ではね、これは僕の考えだと、中島みゆきはあくまでナレーター的な感覚で歌ってると思うんですよね。だからタグボートでもなく、豪華客船の方でもなく、それを見つめてるナレーターみたいな感じで歌ってると思うんです。

田家:「大いなる人々の水平線」の後の部分ってまさにそれですね。カメラが引いていって、彼女の歌声が大きくなっていって、両方とも澄んでしまうというか。まあでもこの曲が進むにつれて、表情が変わっていくっていうのもアレンジでしょう?

瀬尾:だって世界が変わるんですもん(笑)。だから僕の頭の中では、タグボートにたるや、客船にたるやっていうか。客船は荒波の中に突っ込んでいくし、タグボートは港に戻っていくわで、どうやってまとめようって思った作品ですね。

田家:夕靄の中に帰っていくんですもんね。改めて歌を聴くと、なるほどなと思われると
思います。曲が進むにつれて、映像も変わっていく。まさに見事なアレンジの妙という感じでしょう。そして最後にタグボートって繰り返すところのあどけなさというか、明るさ。

瀬尾:タグボートだからですよ(笑)。そこはタグボートになっているので、自分の引っ張る役目が終わったら帰っていくっていうね。世の中にはいろいろな幸せがあるから、全員が同じところ、日の当たるところを目指すのが本当の幸せなのか? っていうことですよね。だから自分たちなりの幸せを見つけた方がいいっていうことじゃないですか?

田家:途中までは、客船もタグボートも両方視野に置きながら、最後はタグボートになっているわけですもんね。私はやっぱりタグボート寄りっていうか。その視線も「CONTRALTO」だなと思いました。

瀬尾:「私はやっぱりタグボートの方に日を当てたい」っていうのが中島みゆきだと思うので。

田家:私は「タグ・ボート(Tug・Boat)」の人生にシンパシーを感じてるのよっていうね。それが最後の明るさやあどけなさに繋がってると考えたら、また新しい聴き方ができるんじゃないかと思っております。

・「離郷の歌」
中島みゆきアルバム『CONTRALTO』全曲トレーラー


田家:アルバム9曲目「離郷の歌」ですが、また曲調が変わってきましたね。ワルツのような。

瀬尾:彼女は比較的ワルツな曲が多いんですが、これは出だしでもうやられますよね。「屋根打つ雨よりも 胸打つあの歌は」っていうこの比較の仕方は詩人ですよね。

田家:瀬尾さんがそう言うと説得力ありますよね。故郷を離れてっていうのは、彼女の中で年々流れているひとつのテーマでもあるんでしょうけど。これもドラマ『やすらぎの刻〜道』の主題歌で、倉本さんの書いた脚本と結びつけているものがここにあると思わせてくれますね。

瀬尾:中島みゆきは倉本聰先生が書いた脚本を先に見せてもらってるので、その中にどこかシンパシーを感じて書いてるんだと思うんですけど。

田家:やっぱり脚本があって生まれたアルバムなんですか?

瀬尾:彼女は主題歌を頼まれるとき、脚本やあらすじを読まないと書かないので。僕も回覧板のように脚本を渡されて、アレンジを考えるんですけどね(笑)。

田家:でも倉本聰さんの視点とみゆきさんの視点がすごく出てるなあと思いましたけどね。

瀬尾:そうですね、着眼点ということで言うと彼女はやっぱりものすごいものを持っていますよね。相手の心に入るような視点を突いてきます。

田家:ドラマの方も、人の人生は思うようにはいかないんだっていうことがテーマになっているように思います。この曲もそういうことなんでしょう。

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