中島みゆきは進化し続ける「天才」 プロデューサー瀬尾一三が語る

中島みゆきとの出会い

田家:なんでこの曲で始めたかというと2つ理由がありまして。1つは来週と再来週が、瀬尾さんのキャリアを改めて辿る2週間で、この曲は、瀬尾さんが初めて手掛けたアルバムの中の曲だからですね。で、もう1つは去年の〈夜会VOL.20「リトル・トーキョー」〉の中でこの曲を歌われていました。瀬尾さんとの出会いの30周年記念を2人で祝われているようでした。

瀬尾:いやいや(笑)。そんなことはないですけど、舞台のところのシチュエーションでどの曲を選ぼうかという時に彼女が選んだっていうことはありましたね。

田家:でも彼女の中ではきっと、30周年というのがあったのではないでしょうか。

瀬尾:うーん、人の心は分からないですからね。特に複雑怪奇な人の心は分かりません(笑)。

田家:今年6月頃に〈リトル・トーキョー〉の映画が公開されるんですよね。昨日から始まったツアーが終わった後ですかね。この〈リトル・トーキョー〉は、「夜会はもしかしたらこんなことをやりたかったんじゃないか」っていう内容だったんですよね。

瀬尾:89年から始まったんですけど、僕としては89年にこれに近い形でできれば良かったのになって思ってます。

田家:音楽に寄りながら、エンターテイメントになっていてストーリーもあって。

瀬尾:ずいぶん時間はかかりましたけどね。ある意味、夜会の理想型に近い形ができたのかなって。

田家:これまでで一番楽しかった夜会ですね。

瀬尾:本人も歌って踊ってましたしね(笑)。

田家:これはぜひ映画館で観ていただけると楽しめると思います。「野ウサギのように」でした。

・「観音橋」
中島みゆきアルバム『CONTRALTO』全曲トレーラー


田家:こちらはアルバムの6曲目「観音橋」ですね。アナログ盤で言うとB面の1曲目になるんですけど、これの1個前の収録曲「 齢(よわい)寿(ことぶき)天(そら)任(まか)せ」がオリエンタル風で、「観音橋」は童歌風に。

瀬尾:ちょっと懐かしい感じを出したかったんです。曲のメロディも言葉遣いもちょっと昔話っぽいので、童歌っぽくしてみましたけどね。

田家:先ほど何気なくB面の1曲目と言ってしまったんですが、それも意識されていたんでしょうか?

瀬尾:そうですね、やっぱり僕らってアナログ世代なので、頭のどこかにはA面B面っていう考え方がありますね。

田家:みゆきさんのアルバムは、アナログ盤でも発売されてますもんね。やっぱりアナログの音って違うと思われますか?

瀬尾:先日アナログ盤の試聴をしてきました。僕がアナログに聴き慣れてるだけかもしれないですけど、音質について言うと、アナログでしか出ない音域というか、空気を伝わってくるものがすごく感じられますね。なので、その辺の音の出方のところがアナログならではっていうところがあります。

田家:なるほど。『CONTRALTO』っていうタイトルもそうですが、、どんな風に聴いて欲しいとか、ここを聴いて欲しいというポイントもあるんでしょうか?

瀬尾:僕の中では一種の原点回帰というか。本人も含めた上で温故知新ではないですけど、元をちゃんと見つめてみようっていうのがあるのかもしれません。

田家:この6曲目の「観音(かんのん)橋(ばし)」も『CONTRALTO』的だなあって思って聴いておりました。

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