チャールズ・マンソンの遺灰マスク、ファンやコレクターの間で物議を醸す

マスク制作を担当したフィッシャー氏の本業

実際に起きた犯罪絡みのマスクの制作――ジョン・ウェイン・ゲイシーの道化師ポゴやH・H・ホームズなど――は、フィッシャーの仕事の一部にすぎない。彼の本業は音楽関連のマスク制作で、アイアン・メイデンやディーヴォ、モーターヘッドの公式ライセンスグッズや、ザ・クランプスのアルバム『Bad Music for Bad People(原題)』のジャケットに描かれたスティーヴン・ブリッケンスタッフ作のサイコビリーなキャラクターのマスクを手がけている。

フィッシャー氏によれば、マスクで採用したマンソンの顔は、1969年12月19日に出版されたライフ誌の表紙をヒントにしたそうだ。瞳の奥に錯乱した表情はいかにもマンソンらしい。元マンソンファミリーの一員ダイアン・レイク氏が2017年の回顧録で書いているように、ライフ誌の表紙はもともと警察による逮捕写真で、1968年4月シカモア峡谷のキャンプ地で、ファミリーが偽造ID所持で逮捕されたときに撮影されたものだ。

WebサイトTMZがマンソンのマスクの存在を報じるや、すぐさま反発が起きた。まずは記事のコメント欄から始まって、やがてソーシャルメディアに広がった。作品に反対する人々の中には、犯罪被害者支援団体Crime Stoppers of Houstonの責任者で、殺人関連コレクターズグッズに“マーダービリア”という呼び名を与えた人物、アンディ・カーン氏もいる。


記事に登場するチャールズ・マンソンのマスク。作品には人間の血が使われ、表面には故カルト指導者の遺灰を吹き付けているとのこと。(Photo by Ryan Almighty)

「殺人記念品業界を監視して20年以上になりますが、率直に言って、これは今まで売りに出された中でも最も(病的で)倒錯したアイテムです――今までいろんな奇妙なものを見てきましたがね」とカーン氏。「理由はどうあれ、人々は数々のおぞましい殺人の首謀者、カルト指導者マンソンを美化し続けています。そして死んだ後も、身に余るような普及の名声を彼に与えてしまっている。彼はこの先も、現実離れした人物として語り継がれるでしょう」

カーン氏も言うように、マーダービリアは大きく分けて2つに大別される。ひとつは、犯罪者や事件関係者が所有または製作した私物(ジョン・ウェイン・ゲイシーのイラストや、処刑室の床から収集されたテッド・バンディの毛髪など)。もうひとつは、実際にカーン氏も目にしたことがあるが、ジェフリー・ダーマー人形やシリアルキラーのスノードームといった制作物だ。今回のマンソンのマスクは、両方のカテゴリーにまたがるという点で珍しい。カーン氏は、そこら中マンソンもので溢れかえる1年であっても――2019年はシャロン・テート/ラ・ビアンカ夫妻殺害事件から50周年にあたる――マンソンの遺灰が使われたマスクは度を越していると考えている。

「『へぇ、こりゃまた奇妙なノベルティグッズだ』と笑い飛ばすかもしれませんが、このグッズの背景にはたくさんの死と破壊、その結果永遠に奪われてしまった人命があることを忘れないでいただきたい」とカーン氏。

Translated by Akiko Kato

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