クリント・イーストウッドが描く「英雄」の共通点

新作映画『リチャード・ジュエル』について語るクリント・イーストウッド監督(Photo by Kaori Suzuki)



イーストウッド監督が語る主人公、リチャード・ジュエル

「彼の夢は法執行者になることで、警察官になりたいと強く思っていた。だから警備員として働いている。その仕事は彼の夢ではないが、少なくとも法執行に関われる仕事だ」と、幼い頃から警官に憧れていた。そして、運命の日が訪れる。「その時、彼は鋭い勘を働かせ、爆弾を発見するほど賢い警備員だった。彼が見つけた荷物を気にかける人は他に誰もいなかったし、危ないものだと思う人もいなかった」と、リチャード以外は不審物を気にとめず、「誰もが彼こそが狂人だと思っていた」という。爆発が起こり、100人を超える被害者が出たが、リチャードの賢明な努力によって、数多くの人々が救われた。「だからごくふつうの人間が英雄に祭り上げられた」のだ。


映画『リチャード・ジュエル』より(©2019 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC)

ところが、容疑者として実名されたことで状況は一転、メディアによって「世間全体とリチャードが対立する構図ができあがってしまった」と指摘する。FBIは、事件の捜査は着実に進んでいることを国民に示す必要があった。記者は、他紙に出し抜かれる前に最新の情報を伝える義務感に駆られていた。そんな時、リチャード・ジュエルを第一容疑者として捜査中との情報がリークされ、実名報道されてしまう。

「とても損な役回りだった。本当の悲劇だ」と語る監督は、この作品は「政治的な話だとは思っていない。それよりも人間を描く物語だ。弱い立場の男性が世間に立ち向かっていく話だ。まるでダビデ対ゴリアテだね」と、旧約聖書に描かれた無謀なる戦いを引用する。敵うはずのない巨大な敵ゴリアテに向かった羊飼いの青年ダビデの姿が、リチャード自身に重なっていくのだ。

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE