中島みゆきを手がけるプロデューサー、瀬尾一三が語る『CONTRALTO』

収録後の瀬尾一三氏(左)とDJの田家秀樹。田家が手にしているのは、中島みゆきの新作『CONTRALTO』のプレスリリース。(Courtesy of FM COCOLO)



「バンドメンバーは60歳を超えている」

田家:今回もレコーディングは日本で?

瀬尾:はい。今は、日本で日本のミュージシャンとやっています。

田家:安定感や心地よさはミュージシャンとの呼吸もあるのだなと改めて思いました。

瀬尾:そうですね。やはり、歌と演奏を同時に録っているので、相乗効果がミュージシャンにも中島さんにも出ているのだと思います。ミュージシャンは日本の中で1番年寄りです。ドラマーは69歳ですからね(笑)。みんな60歳を超えているので。

田家:お聴きいただいたのはアルバムの2曲目「おはよう」でした。

・「ルチル(Rutile Quartz)」
中島みゆきアルバム『CONTRALTO』全曲トレーラー


田家:流れていますのは3曲目。「ルチル(Rutile Quartz)」というタイトルがついております。この言葉は何だろうと思って調べましたら、風水に使われるパワーストーンだと。

瀬尾:中に、鉱物が入っている水晶です。

田家:富と愛を表わすそうです。

瀬尾:僕はこういうのに疎いので、彼女に聴いたらその時手首に付いていたのを見せてもらいました。

田家:色々な意味がありそうですね。

瀬尾:彼女のことなので、色々な意味があって下手なことは言えないです。聴くのは「ルチルって何?」ということだけです。

田家:でも、これが普段から知っている石の名前だとすると、色々な意味が込められているのではないかと想像するのがアルバムの楽しみでもありますね。

瀬尾:彼女が発するものを、受け取る側が色々と考えてくれればいいんだと思います。

田家:改めて歌詞には色々な意味があるなと。このアルバムの名前『CONTRALTO』は、いつ決まったのでしょうか?

瀬尾:はじめデモテープを録る時に、彼女が全ての曲のメロディと詞を持ってきていて。曲順も決まっていて、一覧表が手書きで書いてあって。その一番上に『CONTRALTO』と書いてありました。これは、彼女の音域のことですね。つまり、女性の声にはソプラノ、メゾソプラノ、アルト、コントラアルトがあって、コントラアルトが一番低いんですね。彼女は低い音域なので、そのことを言っているのだと思います。

田家:音楽用語がタイトルなのは、今までに思い当たりません。

瀬尾:そうですね。ある意味、彼女は万来ここだという確認したかったというか、確認させたかったというのがあるのかもしれません。

田家:「ルチル(Rutile Quartz)」なんかも、そういう歌ですよね。それは歌っている時、常に意識されているところではあるのでしょうか。

瀬尾:当然、自分がどのあたりの声でどのあたりが一番いい響きがするのかは常に歌う人たちは考えているので。今は、若者は突然ファルセットになったりとても音域が広いですけれど。でも、改めて確認したのではないでしょうか。自分は、コントラアルトなのだと。

田家:この「ルチル(Rutile Quartz)」の緩やかなコード感と言いますか。それはコントラアルト的だなと思いました。

瀬尾:そうですね。コントラアルトは、結構男性の声に近いので、ある意味女性特有の高音で突き刺すような感じではなくて、太く包容力のある声になりますね。

田家:その気持ちよさを感じる1曲でした。お聴きいただいたのは、アルバムの3曲目「ルチル(Rutile Quartz)」でした。

・「歌うことが許されなければ」
中島みゆきアルバム『CONTRALTO』全曲トレーラー


田家:アルバム『CONTRALTO』の4曲目「歌うことが許されなければ」です。「ルチル(Rutile Quartz)」は象徴的な何かに様々な意味を託しているようなタイトルでしたが、これは直接的なタイトルがつけられています。

瀬尾:正面勝負していますね。初めはどんな世界観に持っていくのか、あとはメロディがすごく特徴的なので、それをどうしようか。楽器は中近東なものを使っていますが、世界観が限定するところではなく、歌うために漂っている感じというか、歌う場所を探している感じを出そうと思って。はっきりしたどこの世界でもなく、不安定な感じにしました。

田家:「歌うことが許されなければ」というのは、許されないというのが一方にあるわけで。そう感じている部分があるのでしょうか?

瀬尾:歌うことが許されない、というのは焚書ということだけではなく、歌うことが他人から許されないのか、自分で許されないのかというのがあると思うんですよね。つまり、自分の意思と具体が分離した感じというか。歌いたがっているけれど肉体的に歌えないのか。その逆があるのかもしれない。

田家:歌うことが許されない時代が来るんじゃないか、とか。

瀬尾:束縛されたようで、歌が自由にならない。みんなが判で押したような曲しか作れない、発表できないというのも外部の要因で。パターンにはめられたものしか歌いないのも、“許されない”ですし。だから僕は、地球の周りを吹いている風のようにしようと思いました。

田家:この転調感がとっても印象的ですね。この直接的なタイトルを見ると、「愛だけを残せ」という曲みたいに強くないんですよね。

瀬尾:だから僕は自問自答に近い感じがあるんじゃないかと思うんですよ。

田家:どこか戯けているようにも見えます。これが他にもそういう曲があるので、彼女の中で意識されているのかなと。

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