ヘイルストームのバンド哲学「ヘヴィ・メタルは生きる希望」

ツアー中、印象に残ったエピソードとは?

ーそして、ヘイルストームは「Download Festival Japan 2019」出演以降、アメリカをずっとまわり続け、ヨーロッパも巡ったりと、ほぼ休暇ナシのツアー三昧の日々ですよね。ツアー中に何か面白いエピソードはありましたか?

リジー そうねえ、あの話はしてもいいかしら?

ジョッシュ それは次の機会にしようか(笑)。

リジー ええと、今回は初めてお会いするから、軽めのものにしておきましょう(笑)。ロンドンの出来事になるんだけど、私の弟でもあり、ドラマーでもある彼(エアジェイ・ヘイル)はとてもクレイジーでね。ツアーにカメラが密着しているから、サービス精神に火が付いたのか、あんなことをやろう、こんなことをやろうと企んでね。ウォッカのボトルを開けて、水のボトルと中身を入れ替えたのよ。自分はウォッカをガーッと飲んでいるフリをして、その中身は水だから大丈夫だよ!という演出もやってみせてね。で、水のボトルにはウォッカが入ってて、それをツアーバスの飲み水のところに片づけて置いたんだけど。いつ間違えて飲むのかなと思ったら、朝方にそれを飲む弟の姿を見つけて、大笑いしたことがあったわ。で、あるときにふと、おかしいなと思ったら、ドライバーが自分のコーヒーを淹れるためにウォッカが入った水のボトルを使用して飲もうとしていたのよ! 弟がフザケてやったことに本人も騙されて、最終的にはドライバーも騙されてしまったよ(笑)。

ー(笑)。ここで話を変えますが、2018年のグラミー賞で過去1年に亡くなった音楽関係者が偲ぶアーティストにパンテラ/ヘルイェーのヴィニー・ポールの名前が上がらなかったことに憤りのコメントを発表してましたが、あれはどんな気持ちから?

リジー 特に自分が関わっているジャンルについては、きちんと伝えていきたい気持ちが強くて、そこから出てきた発言なのよ。グラミー賞は華やかだけど、システム自体は穴だらけで、改善点がたくさんあるわ。上層部の人間はちゃんと音楽を聴いて、判断してるわけではないということを含めてね。もちろんそれに対して、無言を貫いている人もいるだろうけど、私はちゃんと声を出して、このジャンルはこうなんだと言いたかったのよ。ヴィニーは私たちの大切な友人でもあるし、グラミー賞を闇雲に批判することは簡単だけど、私はそういう言い方はしたくなかったのよ。文句を言うだけでは変わらないから、筋道を立てて自分のコメントとして発表したのよ。



Photo by Teppei Kishida

ーそこにはまだヘヴィ・メタルというジャンルは一般的にリスペクトされていないという認識もありますか?

リジー ええ、私たちも「Love Bites(So Do I)」という楽曲でグラミー賞ベスト・ロック/メタル・パフォーマンス部門で受賞しているし、多くの人に注目されている立場にいるからこそ、自分たちに耳を傾けている人がいるならば、私たちが大好きなロック、メタルというジャンルに対して、私が何か言うことで、より注目してもらえるんじゃないかと考えたから。ヘヴィ・メタルという音楽は自分の一部であり、周りの仲間を含めて、生きる希望をもらっているジャンルの一つなのよ。

Translated by Kazumi Someya

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