ヴィンス・ステイプルズ、創造力の秘訣を語る「50歳にもなってラップするなんてまっぴら」

「The Vince Staple Show」の制作舞台裏

―クレジットを見ると、台本もあなたとカルマティックの共作になっているのですが、どのようにストーリーを書いているのですか?

正直言うと、俺は特に何も書いてない。カルマティックは俺の考えを汲んでくれるのがすごく上手くて、俺が「ねえ、こういうことがやりたいんけど」って伝えると、それがどんなにクレイジーでもとりあえずやってみてくれる。俺がどんなにボンヤリとアイデアを伝えても、撮影して形にしてくれるんだ。たまにイマイチな時もあるけど、逆に良い仕上がりになる時もある。大体の時は上手くいくんだけどね。

―次のアルバムはこの「The Vince Staple Show」がベースになるのでしょうか?

これはアルバムではなくて、短い曲をフィーチャーしているだけの独立したプロジェクトだよ。ちょっとしたオマケって感じが強いかも。前からもっと映像のプロジェクトをやりたいと思ってたんだ。次のアルバムは作り始めたばかりで、今はまだアイデアがたくさん湧いている段階。まだ全然想像が付かないな。いいものに仕上がると思うけど。

―今回の映像プロジェクト含め、ショートムービー調の「Prima Donna」のMVや、視覚的なトリックが面白い「Fun!」のMVなど、あなたの作品はいつもヴィジュアル面も強烈で工夫を凝らしていますよね。フジロックのステージの時も、背面にいくつもの映像が映し出されていました。好きな映画や映像作品があれば教えてください。

俺は常にたくさん映画を観ているタイプじゃないし、自分が好きな映画は必ずしも「いい映画」じゃないんだよね(笑)。特に80年代のバカげたコメディ映画が好き。『ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀』とか『ビバリーヒルズ・コップ』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『National Lampoon’s Van Wilder(原題)』とかね。子供時代はたくさんのTV番組や映画を観ていたな。こういう作品って、ある意味、人生のピュアさを反映しているような感じがしたんだ。だから、子供の頃はマヌケなコメディ映画が好きだったのかも。

―2018年に「Get the Fuck Off My Dick」を発表したときに「早期引退のために200万ドルを募る」といった趣旨のクラウドファウンディングのページを立ち上げて話題になりました。結局、早期引退に関してはジョークだったわけですが、自身の将来のキャリアについて考えることはありますか? 本当に早いうちに引退したいと考えている?

50歳にもなってラップするなんてまっぴら、とは常に思ってる。

―先日、ジェイ・Zは50歳の誕生日を迎えたばかりですが。

でも、ジェイ・Zだって前ほどはラップしてないじゃん。それに彼はビリオネアなんだからそんなにラップする必要もないだろ。俺は金銭的な問題さえなければそんなに働き続けたくないよ。俺はすでに今でも背中の痛みとかを感じてるくらいで、自分が50歳になったときにまだステージ上で飛び跳ねている様子なんて想像できない。きっと50歳になる頃には郵便局とかで働いて、子供と一緒に……そうだ、俺、子供は欲しくないんだった。

―なるほど。2019年を振り返って、最大の出来事は何でしたか?

2019年最大の出来事……(マネージャーに向かって)何だと思う?

マネージャー 家を買ったじゃない

そうだ。まだ全ての工程が終わったわけじゃないんだけど、家を買ったんだ。ロングビーチにほど近い場所で。今の家はそんなに綺麗じゃなくて、ソファの上には服が散らかってるし、大家が家に入ってくるたびに恥ずかしい思いをしてる。でももうそんな生活は終わりだ。

―じゃあ新しい家の中に立派なスタジオも作って、さらに音楽制作が捗りそう?

スタジオなんて作らないよ。今はいいマイクといいパソコンがあれば十分レコーディングできるから。でも、新しい家にはXbox用とプレイステーション用の部屋をそれぞれ作る。俺はよく友達と深夜までゲームをするんだけど、新しいゲームを試すために別々の部屋があったら最高だよな。あと、俺の夢としては子供たちにEスポーツを教える仕事がしたいんだ。それで子供たちをリッチにしたい。俺のレーベル・スタッフは柔術をやってるから、それを教えてもいいかも。ムエタイとか空手もかっこいいよね。



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