ヴィンス・ステイプルズ、創造力の秘訣を語る「50歳にもなってラップするなんてまっぴら」

ヴィンス・ステイプルズ(Photo by @_24young_)

2019年、フジロック・フェスティバルに出演し、大いにオーディエンスを沸かせたヴィンス・ステイプルズ。ケンドリック・ラマーやタイ・ダラー・サインら、ヒップホップ・シーンを沸かせるスターたちとも共演する一方で、フルームのツアーに参加したり、ゴリラズの楽曲に招かれたりと、彼の自由なクリエイティヴィティに惹かれるミュージシャンも少なくない。

ヴィンス・ステイプルズの楽曲はアバンギャルドな魅力を放ち、常にこれまでに聴いたことがないような規格外のサウンドを届けてくれる。アメリカの西海岸に拠点を置く彼らしく、ウエストサイド特有のリラックスした雰囲気を放ちながらも、有刺鉄線が張り巡らされたようなヒリヒリしたヴァイブスがヴィンスの楽曲の持ち味でもある。今回のインタビューは、2019年12月7日・SOUND MUSIUM VISIONでのライブを控えた前日に行ったものであり、一部、ヴィンスらしいユーモアも交えて答えてくれた。

―また日本に来てくれて嬉しいです。今回の滞在はどんな感じですか?

前回、フジロックで来日した時よりも自由な時間が多いスケジュールだから、もっと楽しめると思う。クールな滞在になると思うよ。とにかく金を遣いたい! あと、teamLab Planetsに行く予定。

マネージャー あと、キル・ビル・レストランにも行く予定だろ?

―「権八」ですね。

そう。そこで映画も撮らなきゃ。俺の単独主演で『キル・ビル3』をね。

―2019年のフジロックでのステージはいかがでしたか。

あんなに人が集まってくれるなんて思ってもみなかった。何千人ものオーディエンスが来てくれて。今回のライブはクラブが会場だから、とっても楽しみ。ちょうどアメリカでも、小さい規模のライブを増やしたいと思ってたところだから。

―まず、あなたの音楽的な魅力について教えてください。いつもあっと驚くようなサウンド・アプローチに挑戦していますよね。個人的に大好きな曲はジェイムス・ブレイクがプロデュースした「War Ready」なんですが、アンドレ3000のヴォーカルをサンプリングしていて、これまでに聴いたことがないような楽曲に仕上がっていました。

あの曲は、大半はジェイムス・ブレイクのアイデアがもとになってるんだ。僕がビートをもらった時は既にほぼ出来上がっていて、自分でちょこっとアイデアを加えただけ。



―普段、どうやって「こういう曲を作ろう」というアイデアを産み出しているのですか?

特にアイデアを探しているというわけではなく、「こんなことをやってみたい」という強い想いがあれば、「ちょっとくらい失敗してもいいか」という気持ちになるんだよね。そのマインドが新たな作品に繋がってると思う。時にはいいものが出来るまでに辛抱強く待たないと行けない時もあるけど。ジェイムス・ブレイクとの「War Ready」の時は割とそうだったかな。

あと、素晴らしいプロデューサーとの出会いも大事。自分の「こんなサウンドにしたい」という思いを信じて具現化してくれて、かつ一緒に新しいことにチャレンジするリスクを厭わないプロデューサー。幸いなことに、LAを拠点にしているとそういう素晴らしいプロデューサーを出会う機会にも恵まれてるんだよね。

―基本的には、オーガニックな出会いが新たな挑戦に繋がっているという感じでしょうか。

そうだね。例えば『Big Fish Theory』(2017年)に収録されている「Yeah Right」という曲があるんだけど、アルバムをリリースする前、フルームのオーストラリア・ツアーに、(シンガー/プロデューサーの)ソフィーと俺が一緒に参加したんだ。みんな結構早く寝ちゃうんだけど、俺とソフィーは朝6時くらいまでずっと音楽の話をしたり実際に楽曲を作って過ごしたりすることが多かったんだ。ある日、夜中にフルームのInstagramを見たら、まだ起きてるってことが分かって、深夜3時くらいにオーストラリアのスタジオを借りてみんなで曲を作った。それが「Yeah Right」になった。もちろん、寝なきゃいけない時間は過ぎてるんだけど、「今、ここに集まってるヤツらと一緒に曲を作ったら、これまでとは異なるクリエイティヴィティが生まれてヤバいものが出来そうだ」と思うと、やっぱり時間は関係なくなってしまうよね。



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