プログレ史上最高のドラマー、ビル・ブルーフォードが語るイエス、クリムゾンと音楽家人生

1981年、キング・クリムゾン在籍中のビル・ブルーフォード(Photo by Paul Natkin/Getty Images)


ーイエスでロックの殿堂入りしたことは、あなたにとって大きな出来事でしたか?

いい質問だ。常に世界で最も素晴らしいショーを見せ続けなければならないロックの殿堂を運営する人々に、我々が受賞の待ち行列にいることをアピールした訳ではないけれどね(笑)。受賞メンバーに入れて嬉しいし、感謝もしている。実感が湧くまでに一晩かかった。もらったトロフィーはたぶんバスルームかどこかに飾ってあると思う。部屋中にトロフィーや何やらを飾ったりするのは好きではない。だから本当は受賞されることなど苦手なんだろう。マックス・ローチなどから賞賛された方が自分にとっては、おそらくもらったトロフィーよりもずっと価値を感じるのかもしれない。でも受賞できて嬉しい。私は招待されることに反発するような偏屈な人間でもないし、招待されないことにずっと不満を言い続けているような人間でもない。私は呼ばれたら喜んで行く人間だ。

ーリック・ウェイクマンのスピーチを聞いてどう思いましたか?

おいおい長いよ、と思った。でも残念ながら腹を抱えて笑ったけれど(笑)。(怒ったように)「リック!」という感じだった。我々はステージの上で気まずかったよ。あれがリックだとしか言いようがない。彼に任せるとああなるんだ。



ーキング・クリムゾンが殿堂入りするとしたら、何か感じるものはあるでしょうか?

あるね。でもロバートが賛同するとは思えないから、殿堂入りは実現しないだろう。私がすごく乗り気だという訳ではないが、彼の方はもっと冷めていると思う。彼の気持ちを代弁する気はないが、心の底では彼も殿堂入りしたいだろう。でも彼はどうしても受け入れないと思う。本当の気持ちは知りようもない。長い年月が経って、彼も私もだいぶ変わったからね。

ー最近もロバート・フリップとはなんらかの形で連絡を取っているのでしょうか?

ほとんど取っていない。彼のバンドはとても感じが良いし、メンバーのほとんどは知り合いだ。キング・クリムゾンが最近ロンドンへ来た時には、バックステージでジャッコ・ジャクジク、トニー・レヴィン、パット・マステロットといった懐かしい面々と会った。ロバートも顔を見せて、少し挨拶した。そんな程度だ。皆は「一緒に『Schizoid Man』か何かをやろう」と言ってくれるが、私は「冗談言わないでくれ。もう10年もドラムに触っていないよ」と断った。今はそんな感じで、彼らが演奏するのを観ているのが楽しい。

この手のことはさらっと済ませるのが好きだ。イエスが、パラディアムのステージ上で彼らを紹介してくれないかと頼んできた。パラディアムはアメリカで言うところのラジオシティ・ミュージックホールのような大きな劇場で、イギリスでは大きな人気がある。ステージに立ってイエスのメンバーを紹介するのは、何だか奇妙な感じがした。イエスの熱狂的なファンは私に何か演奏して欲しいと思っているだろうからね。でも実際にはただ挨拶して、バンドをステージへ招き入れただけだった。

ー「プログレ(prog)」という言葉に対するあなたの考えを、ぜひ伺いたいと思います。ロバート・フリップなら、嫌悪感を示すでしょうね。

そうそう、そう思う。とても不愉快な言葉だよね。

ー(笑)あなたの見解はどうでしょう?

とても不快だ。進歩という発想は好きだ。あらゆるミュージシャンは進歩していくと私は信じているから。かつて私はカントリーミュージックを聴いたことがなかったし、君もそうだとは知らなかった(笑)。それでもカントリーミュージックが進歩してきたことは理解している。進歩という言葉の持つイメージは好きだ。しかし「プログレ」はとても酷く不快だ。私はこれ以上の説明はできないと思う。

ー70年代後半頃のムーヴメントに逆光し、押された烙印について多くの議論がありました。その時代に関わっていた人間として、意識はしていましたか?

そうだね、知ってはいた。もちろん私は長いこと関わってきて、時代遅れになったりまたブームが来たりという状況を見てきた。そして80年代にはグランジやパンクやいろいろな盛り上がりがあり、プログレッシブなどと言えばただ笑い飛ばされるだけだった。しかし私は構わなかったし、そのうち逆行することがわかっていたので、全く気にすることもなかった。40代や50代以上の人なら、ブームが何らかの形で繰り返し、新たな世代に再び評価されるのを見てきただろう。今は若いミュージシャンも多い。ディストリクト97というシカゴ出身の素晴らしいバンドがある。彼らはここイギリスでも活躍している。いわゆる次世代のプログレッシブ・バンドが出てきて、かつての我々よりも素晴らしい演奏を聴かせている。

ただし難しいだろうが、彼らも独自の道を見出さねばならない。なぜなら我々が既に多くのスペースを取ってしまったからだ。我々古い世代が、進歩の余地を奪ってしまった。しかし今や、おびただしいポピュラー音楽の50年かそれ以上の歴史が積み重ねられている。100年分の素晴らしいポピュラー音楽が今なお記録され保持されているから、今のミュージシャンはそれよりも良いものを作り出さねばならない。そうやって進んでいくのだ。難しい課題だし容易いことではない。

Translated by Smokva Tokyo

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