ASKAの2019年 チャゲアス脱退を経て新たに見つけたエンターテイメントの本質

ASKAがアイスランドで感じたこと

―「歌になりたい」のミュージック・ビデオはアイスランドで撮影されていますが、アイスランドを選んだ理由は?

プロデューサーが選んできたんです。そのプロデューサーのプレゼンを受けて、監督が「よし! ここで」行こうと。で、監督が自分の頭の中に描いていることを説明に来たんですが、正直僕にはさっぱり分からなくて。アイスランドと「歌になりたい」が結びつかないわけで。土壇場で行くのをやめようかと思ってたぐらいですから。それぐらい監督の中にある世界が、どうしても掴めなかった。ただその監督をクリエイターとしてすごく認めていて、きっと彼の頭の中にあるものに、まだ僕が触れてないだけだと。触れた時には何かの現象が起きるだろうと思っていました。自分が理解さえすればこれはいいものになると思ったのでとにかく信じようと。それで、アイスランドに行ってみたら、正に『漂流教室』じゃん!って。そこからは一気にでしたね。

―実際に足を踏んだアイスランドはどうでしたか?

昼間は15℃から18℃ぐらいの間。夜になると撮影ロケ地に入っていく間はもうマイナス2℃。車の中が人の呼吸でフロントガラスが曇って。思ったのはおおよそほんの少し前までは、思ったこともない土地に来てしまったっていう。人生で旅行とか行くじゃないですか。アフリカまでは想像つきましたが、ただ南極、北極とかあの辺は想像がつきませんでした。まさか自分がアイスランドに行くなんて思ってもみなかったですから。1600万年前の地球の姿がそこにまだ残っているって言われているんですけど、これがその姿だったのかなって思いながら感慨深く見てきたんですけどね。そこらここらに火口があって。普通火口って火山だけど、火山じゃなくて平地に火口があって。割れ目ですよね。その地割れから噴煙が噴き出ていて、それが至るところにあって。結局火山と一緒だから溶岩に繋がるわけですよね? 溶岩の上に火山灰が積もって、その火山灰を養土にして、苔が覆い茂ってて……。何だろう、想像もしなかったものを見れてしまったっていう。もうそれに尽きますね。

―ええ。

あとはそういう土地でMVを撮れたことの喜びだけですね。だからアイスランドについて語ってくださいって言われても語るものはなにもないです。唯一語れるとしたら、よくあの土地に35万人もの人が固まって住んでるなって。帰りに、剣道の先生達がお酒をたくさん飲まれるので、duty freeにお土産のお酒を買いに行ったんです。でも、ウィスキーがほぼない。棚に並んでるのはほぼウォッカ。ウォッカはちょっとと思って、少しだけ棚にあったウィスキーを買ってきました。そのウィスキーでさえ60何度です。寒い国の人達の生活様式に入り込んだお酒だからそうなっていくんでしょうけど。日本より小さな面積の国。でもあの過酷な環境の中で、35万人が暮らしているということ自体が信じられなかったですね。どこもそうでしょうけど、大陸を発見したらそこは自分の土地だと決めて、そこから居座って、住めば都となっていくわけですから。東京に生活している自分達には想像がつかないだけで、向こうの人達にとっては普通に当たり前のことなんでしょうけど、すごく大変ですよね。夏が短くて、あとは全部冬ですから。

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