田中宗一郎が解説、人々の期待に応えないヤング・サグこそが真のアーティストである理由

ヤング・サグ(Photo by C Flanigan/Getty Images)

音楽評論家・田中宗一郎と映画・音楽ジャーナリストの宇野維正が旬なポップカルチャーの話題を縦横無尽に語りまくる、音楽カルチャー誌「Rolling Stone Japan」の人気連載「POP RULES THE WORLD」。

2019年9月25日発売号の対談では、2010年代のラップブームにおいて一際異彩を放っているアトランタ出身のラッパー、ヤング・サグについて田中が解説している。

ヤング・サグは今年5月にJ・コールとトラヴィス・スコットが参加した名曲「The London」がヒット、その勢いで正式デビュー・アルバム『So Much Fun』を自身初の全米1位に送り込んでいる。しかし彼は、これまでに何度もシーンの最前線に躍り出るチャンスがありながらも、自らそこから降りているような、一見不思議なキャリアの積み方をしてきた。人々の期待に真正面から答えないがゆえに理解されにくかったヤング・サグの真価を、田中はこのように語っている。

田中:(『So Much Fun』の最後にさりげなく「The London」を入れていることに触れ、)ずっとそういうことをしてきた人だしね。2016年を代表する1曲、トラヴィス・スコットとの「Pick Up The Phone」の時と同じでしょ。二人がビートを取り合って、どちら名義の曲にするか散々揉めた上で、結局ミックステープの最後にサッと入れてたり。


Young Thug - The London ft. J. Cole & Travis Scott




Young Thug, Travis Scott - Pick Up the Phone ft. Quavo




田中:やっぱりきちんとキャリアをオーガナイズすることとは無縁な人なんだよね。ワーナーからすべての権利を取り戻した時期のプリンスみたいなものでさ。傑作も迷作も駄作も作るっていう。でも、「そもそも表現なんて自分のプロップスを高めるためにやるものじゃない。勝手気ままに自分がやりたいことをやるためにある」っていうごく当たり前のことをヤング・サグは思い出させてくれる。だから、そもそもジェフリーに何か期待したりすることそのものが間違ってたって話。彼は社会的な役割だとか、アイコンにまつわる期待みたいなメカニズムの外側にいるから。やっぱり彼は最高。

本誌での2人の会話は、『So Much Fun』のアルバムとしての評価や、最近のJ・コールに見られるモードの変化などについても触れている。

Edited by The Sign Magazine


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