退廃的なノスタルジア女王=ラナ・デル・レイがいなければビリー・アイリッシュの世界的大ブレイクはなかった?

ラナ・デル・レイ(Photo by Mat Hayward/Getty Images)

音楽評論家・田中宗一郎と映画・音楽ジャーナリストの宇野維正が旬なポップカルチャーの話題を縦横無尽に語りまくる、音楽カルチャー誌「Rolling Stone Japan」の人気連載「POP RULES THE WORLD」。

2019年9月25日発売号の対談では、ニューアルバム『ノーマン・ファッキング・ロックウェル!』が全米初登場3位につけ、海外の有力メディアから軒並み絶賛を受けているラナ・デル・レイに注目。2012年にデビュー・アルバム『Born To Die』が700万枚のセールスを記録して以来、2010年代を通してメロウで退廃的な世界観を貫いてきた彼女がいたことによって、現在のビリー・アイリッシュが活躍する下地が出来たのではないかという見解を示している。

田中:こんな仕事してる時に向かないレコード久しぶりだよね(笑)。ひたすらメロウだし、退廃的だし、勤労意欲を根こそぎ剥ぎ取ってしまう劇薬レコード。

宇野:でも、改めてこの甘美で沈静な67分のアルバムを聴くと、やっぱり彼女は時代のトップ・ランナーなんだと確信しましたね。だって、退廃的でダークな世界観ってことで言えば、ビリー・アイリッシュにしたってラナの存在なしには生まれてこなかったわけだし。

田中:もう姉妹みたいなもんだよね。

宇野:今ではアリアナ・グランデとマイリー・サイラスとチャーリーズ・エンジェルに扮して主題歌までやってる。


Ariana Grande, Miley Cyrus, Lana Del Rey - Don’t Call Me Angel (Charlie’s Angels)



田中:そういう役割も引き受けるようになったのも、この傑作を作ったことで吹っ切れた証拠なのかもね。

宇野:いや、本当に。すべてのジャンルの様式をポップがすべて飲み込んだ時代がやってきた、ビリー・アイリッシュ以降の2019年だからこそ、ラナ・デル・レイの真価がクリアになってきたんだなって。

本誌での2人の会話は、彼女のアメリカ文化に対するオブセッションやその優れた批評性、ジャック・アントノフや長年のコラボレーターであるリック・ノウェルスのプロデュース・ワーク、そしてラナ・デル・レイとビリー・アイリッシュとの位相にまで話が及んでいる。

Edited by The Sign Magazine


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