マリファナ、ついに宇宙へ行く(環境対策の一環で)

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農業バイオテクノロジー企業Front Range Biosciences社はこのほど、2020年3月の国際宇宙ステーション物資輸送の際に、大麻の細胞培養物も宇宙へ送ると発表した(厳密には、マリファナの原料と同じアサ科の一種ヘンプで、微量ながらTHCが含まれる。昨年、規制物資法が定める規定薬物スケジュールIから除外されたばかり)。プロジェクトの目的は大麻の細胞が宇宙環境下で遺伝変異を起こすか否かを調べるというもので、地球に帰還後科学者たちは大麻のDNAを調べ、遺伝子に変化があったかを検査する。

このプロジェクトはSpaceCells USA社と、コロラド大学ボルダー校附属研究所BioServe Space Technologiesとの共同開発によるもの。480以上の細胞培養物が宇宙空間へと旅立ち、宇宙放射線や無重力状態といった環境要因の下に置かれる。最終的にはこうした宇宙環境下で植物がどう進化するのか、特に大麻が宇宙でどう発育するのかを確かめる。大麻は繊維の原料や非生物分解性プラスチックの代替品、また数々の治療効果があると言われる非向精神成分カンナビジオール(CBD)の主原料など、様々な用途があるため非常に有益な情報となる(ただし、治療効果に関しての既存の研究では、特定のてんかん治療にのみ効き目があることしかわかっていない)。

だがもっと平たく言えば、今回のプロジェクトは栽培地域が気候変動の影響を受けてしまった植物をどう品種改良すればいいのかを調査するためでもある。例えばFront Range社は昨年スペシャリティコーヒーの企業と提携して、南カリフォルニアの気候でも栽培できる品種を開発した。それにより、コロンビアのように気温上昇や日照時間減少の影響を著しく受けている地域のコーヒー農家の負担を減らすことが可能となる。

まずは新しい環境で植物のDNAがどう変化するのかを把握するのが第1段階。その後、そうした変化が起こりうる環境でも発育できるように大麻を品種改良してゆくことになる。「我々は壮大なアイデアを追求しています。新型の化学変種や、干ばつや寒い環境にも適応できる植物を市場に出すビッグチャンスです」と、SpaceCells社のピーター・マカラーCEOはローリングストーン誌に宛てたプレスリリースの中で語った。「今回のようなミッションを通して、気候変動に適応した食料供給が行えることを証明できると期待しています」 特に大麻は発育が早く、費用対効果にも優れ、自然に分解できることから、気候変動対策の特効薬として専門家も太鼓判を押している。そういった意味でも、価値のあるプロジェクトと言えよう。

Translated by Akiko Kato

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