IWGPヘビー級王者オカダ・カズチカが抱く「プロレス」を担う覚悟

オカダ・カズチカ(Photo by Shuya Nakano)

ここ数年続いている「プロレス再ブーム」の波。その勢いがさらに増していることを証明するのが、2020年1月4日&5日の2日間にわたり開催される、新日本プロレスの東京ドーム大会。そして、この大会で「主役」をつとめる大看板がレインメーカーこと、オカダ・カズチカだ。

2連戦の目玉として行われるのは、2日目に開催されるIWGPヘビー級王座&IWGPインターコンチネンタル王座のダブル・タイトルマッチ。しかし、現在IWGPヘビーのベルトを巻くオカダは、今回の2冠戦に対して否定的な立場にある。オカダが考えるベルトの価値、そしてベルトを巻く者の責任とは? 「チャンピオン」として、テレビ出演を中心に東京ドーム大会のプロモーションも積極的に行うオカダ選手に、その胸中を聞いた。

海外へも飛躍した新日本の2019年。しかしオカダはいう「まだまだ」と

─まずは2019年の振り返りから。オカダ選手はもちろん、新日本プロレスにとっても様々なトピックがあった1年だったと思います。

オカダ 年始の東京ドーム大会で、ジェイ・ホワイトに敗れるっていう、つまずきはありましたけど(笑)。それでも4月には、NYのマディソン・スクエア・ガーデンのメインイベントでジェイからIWGPヘビーのベルトを奪い返していますし、他にも7月にはG1クライマックスの開幕戦がアメリカで開催されたりイギリスでタイトルマッチができたり(8月)と、今年は海外での試合が特に印象に残っていますね。新日本プロレスのパワーが海外に届いているんだってことを、あらためて実感できたといいますか。

─やはり、日本で試合をするのとは勝手が違うものなんでしょうか?

オカダ まぁ、正直なところ何も変わらなかったですね。特に今回は、新日本プロレスのパッケージをそのまま持って行ったということもありますし。それで、海外のお客さんから日本と変わらないというか、それ以上の歓声をもらうことができたのは、ともて嬉しかったですよ。だからG1で優勝できなかったりとか、悔しいこともあったけど、トータルとすれば良い1年だったんじゃないですかね。

─確かに、新日本の積極的な海外進出は、ファンにとっても大きな出来事でした。振り返れば、オカダ選手の凱旋帰国による「レインメーカーショック」以降の歴史は、そのまま新日本を含むプロレス界が再ブームの道を進む歴史でもあります。そして2020年には、ついに東京ドーム2連戦という快挙も達成しました。再興の中心人物として、現状をどのように捉えていますか?

オカダ 、確かに、以前に比べれば盛り上がってきているとは思います。新日本についても、ここ数年、選手の入れ替わりは激しかったですけど、それを補うスターが次々と登場していますしね。でも、それが世間に届いているのかといえば、僕としては全然まだまだだな、と。

─まだまだ、ですか。

オカダ まだまだ、ですね。たとえばマディソン・スクエア・ガーデンで大会を開催して、チケットが即完売になったと。それって、とても凄いことなんですけど、結局はプロレス界の中の出来事に収まってしまっている。東京ドーム2連戦にしてもそう。残念ながら、そこまで世間のニュースにはなっていませんよね。

─確かにそうかもしれません。では敢えて聞きますが、世間に届いていない原因って、どこにあるのでしょう?

オカダ そこなんですよ。僕もそうなんですが、選手たちはみんな、リング上で自信を持って素晴らしい闘いをしていれば、それがいつか世間にも届くだろうと思っていたんです。もちろん、それがいちばん大切なことなんだけど、一方でそれだけではダメなんじゃないか、っていう気持ちも出てきていて。リング上での闘い以外の部分で、何をすれば世間が注目してくれるのか? ここ数年、その答えをずっと探している感じですよね。

─それでいえば、バラエティ番組に出演したり朝のワイドショーでコーナーMCを務めたりなど、2019年はメディア露出を積極的に行っていますよね。そうしたアクションも、対世間の戦略ということでしょうか。

オカダ そうですね。とにかく、プロレスを知らない人に対して、どういう形でもいいから、何かしらのきっかけを増やしていきたいんです。なんか、体の大きな金髪の兄ちゃんがいるぞ、っていう程度の認識でもいいから。

─IWGPヘビーのベルトを持つ、いわばプロレス界の頂点に君臨する立場の選手として、そこまで謙虚になれるのって、凄いことですね。

オカダ 以前は、オカダって誰? っていう人がまだまだ大勢いることに対して、ちょっと凹むこともありました(笑)。でもよく考えてみれば、それだけ大勢の人に、プロレスを知ってもらうチャンスがあるってことじゃないですか。まだまだ、プロレスを盛り上げることができるぞって。楽天的なのかもしれないけど、今は自分の知名度の低さにすら希望を感じているところです。

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