Z世代が動物の着ぐるみにハマるのは「自分らしくなれるから」

「着ぐるみを着れば自分の殻を破ることができる」(Photo by Lyndon French for Rolling Stone)



成人のファーリーが未成年を標的にするケースも

実際に、性的理由でファーリー文化にのめりこむ人も確かにいるし、わずかながらも、成人のファーリーが未成年を標的にするケースもある。最も有名なのが、2017年、ペンシルベニア州バックス郡で摘発された小児性愛者グループだ。だが大多数のファーリーも言うように、擬人化した動物を性的対象とする人々はごくわずかで、ファーリー・コミュニティは非常に多様で、そうした一部のサブグループで一括りにすることはできない。「ファーリーについては前よりいろんなことが知られるようになりました。単に性的妄想だけじゃないことが知られつつあります」と、猫がファーソナの16歳、Crowflightも言う。「アーティストやダンサー、映画監督の中にも、様々な理由でファーリーに関心を持つ人がいますよ」(ちなみにコンベンションに限って言えば、未成年者向けプログラムと成人向けプログラムは厳格に分けられている。Midwest FurFestの広報担当主任マット・バーガー氏も言うように、通常コンベンションでは安全プレイ講座といった18禁プログラムは夜の時間帯に設定されているし、『会場でのラバースーツは暗くなるまで禁止』というルールを厳守させている)。

ファーリーに自分らしさを求める子供やティーンは(そして一般的なファーリーの多くも)社会全体から疎外されている。圧倒的に多くのファーリーが自分はLGBTQだと自覚しているという調査結果もある。Pyxeの話によると、子供たちはファーリーとしてのカミングアウトや、幸せそうな先輩LGBTQファーリーとの交流を、LGBTQだとカミングアウトする第一歩と考えているようだ。「ファーリー・コミュニティは非常にオープンなので、伝統的な家庭の中で暮らしているよりもずっと安心して自分探しができるんです」

中には障害を持つファーリーや、精神疾患に悩まされているファーリーもいる。例えばジェンの娘Emilyは不安障害の診断を受けている。コンベンションの来場者の1人で、TikTokでプチブレイク中のオーストラリアン・キャトル・ドッグの17歳、Wyattもそうだ。「イベント中ずっと、みんなが自分に気づいてくれて、ハグさせてって言ってくれた。それがすごく嬉しかった。みんなが気にかけてくれるんだって感じがしたし、いちいち自分の行動を気にしなくていいって思えるから。単なる犬だからね」とWyatt。


Wyattと着ぐるみ(Photo courtesy @_foxchow)

親たちも、たとえ理解はできなくとも、直感的にその良さを認めている。Wyattの母親アンもこう言う。「娘には何度も言っているんです。さすがに私の歳ではこういうのは好きになれないけど、あなたのことは大好きよって」

もちろん、サブカルチャーが注目を集めているからというだけでメインストリームになるわけでは断じてない。いじめ対策や様々なアイデンティティが認められてきてはいるものの、Z世代の子供が中学や高校に堂々と犬や馬の格好をして行くことはまだ社会的に認められていない。

「メッセージの80%は『学校でいじめられてる、どうすればいい?』」とPyxeは言う。これに対する彼の答えは現実的だ。「周りから変だと思われがちなファンダムの一員だと思うなら、誹謗中傷を一切気にしないと断言できない限り、秘密にした方がいいといつも教えています」

とは言え、Pyxeのようなクリエイターがさらに人気を集め、オタクな文化が全体的にさらにメインストリームになりつつあるのを見ると、ファーリーもかつて偏見の多かった他のサブカルチャーと同様に、永遠に影に隠れ続けなくてもよくなるかもしれない。例えば、ASMRというYouTubeで人気の謎の「囁き」動画も長らく性的嗜好として見られていたが、2018年2月にゾーイ・クラヴィッツが出演するミケロブ・ライトのCMがスーパーボウルで流れ、リトマス紙のようにメインストリームでの許容を測った。

ファーリーが同じような道を辿ることが全く想像できないわけではないが、たとえそうならなくても、ファーリーを愛好する子供たちの親は気にしていない。「学校で他の子たちがファーリーであることをバカにしたり、つらい思いをさせたりするけど、着ぐるみを着れば殻を破ることができるんです」とジェンは言い、TikTokで人気の犬や猫、狼、熊と兎のハイブリッドたちでいっぱいの部屋を歩き回るEmilyに視線を向ける。

声が喉につかえながら彼女は言った。「これのおかげであの子は本来の自分になれたんです」



Translated by Akiko Kato

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