集大成的な『MUSiC』と11年目以降の未来が見える『playlist』
―今回、新しい作家さんもいる一方で、たむらぱんさんや池田貴史さんのように、エビ中には欠かせない作家さんの楽曲がないというのが攻めてるなと思いました。
真山 『MUSiC』でも新しい作家さんはいましたけど、あの作品のテーマが「今までお世話になった方の曲」っていうことだったし、スケジュールが合う限りそういった方々とはお仕事できたので寂しさはないですね。それに10周年のタイミングで、集大成的な『MUSiC』と11年目以降の未来が見える『playlist』が作れたことはうれしいし、希望が見えるなと思います。
―前回のインタビューでは、各メンバーがこの10年で全体的にどう変化したかをうかがったので、今回は歌唱面にスポットを当てて、今作の収録曲とともに振り返っていけたらと思います。まず、真山さんのメイン曲「愛のレンタル」ですが、<踊ればいい>の歌い方がいいですよね。
真山 うれしい。私、マカロニえんぴつさんが好きでよく聴いてるので、自分のなかにはっとり(作詞作曲を手掛けたマカロニえんぴつのメンバー)さんを宿す感覚で歌いました。
―真山さんのヴォーカルは年々大人っぽくなってますよね。
柏木 そうですね。「愛のレンタル」では力の抜き方を知ってる歌い方ができてると思います。
真山 あ、うれしい。そんなにほめてもらえるなんて(笑)。
―感情がより出ているというか。
真山 声質の話になっちゃうんですけど、私の声はどうしても明るくならなくて、レコーディングのときも「とにかく明るく」って言われることが多いんですよ。自分としては明るく歌ってるんですけどそれが声の色として出てこなくて、それが自分のなかではずっと課題だったし、アイドルらしく歌わなきゃいけない、グループとして声を統一しなきゃいけないっていう苦しさがあったんですけど、「愛のレンタル」はそういうことを考えずに楽に歌えました。
―「老醜ブレイカー」(2013年発表のソロ曲)は背伸びした大人っぽさが魅力でしたけど、「愛のレンタル」はしっかり大人になった今の真山さんの歌ですよね。
真山 うれしい。ありがとうございます。
―続いて、「I’ll be here」のひなたさんですが……。
真山 もう、無双だよ!
―オープニングの喉の使い方からとてもいいですね。
柏木 喉の使い方はすごく言われました。レコーディングのときに、作詞作曲をしてくださったiriさんご本人が来てくださって、喉の使い方とか声の出し方とか全部アドバイスをしていただいてから歌ったんですけど、自分のなかでこの曲が『playlist』のなかで一番のお気に入りで、「好きだなあ」と思いながらレコーディングに行ったらご本人がいらっしゃったので、「ああ、どうしましょう!」みたいな気持ちになって……。
―そうなりますよね。
柏木 私、レコーディングであまり緊張しないんですよ。緊張したら絶対に力が入るから。でも、このときはどうしていいかわからないぐらい緊張して。で、レコーディングが終わったあと、スタッフの方から「珍しく緊張してたね」って言われてしまって、「うわ、緊張が伝わってしまった!」って思ったんですけど、1番丸々を自分のパートとしていただくことはなかなかないので、ライブでやるときの緊張感は半端ないだろうなって思います。レコーディングが終わって歌割りをもらったとき、真山が先にこの曲を聴いてて、「ひなた、1番全部じゃん!」って言われたんですよ。だけど、私はまだ何も知らなかったから「何事だ!?」と思って聴いたら、「おおっ!」って。うれしいですね、こうやって使っていただけて。
真山 カッコいいよね。この曲に限らずなんですけど、ひなたってまっすぐスコーン!って声が出るイメージが強くて、それがエビ中の強みだし安心感があるんですけど、そこにさらに色がついたなって。天才がさらにレベルアップしたみたいな感覚ですよ。
柏木 いやいやいや!
真山 「もう、どこまで行っちゃうの!?」って。
―悟空が超サイヤ人になったみたいな。
柏木 ないないないない!
真山 そう! この曲では特にそういう感じが出てるから……ドキドキしました! あはは!
―新しい扉を開けた感じはありますよね。続いて、「PANDORA」は美怜さんのハイトーンボイスが曲を引っ張ります。
柏木 あの声は美怜ちゃんしか出せないもん。
―今までで一番高いですよね。
柏木 高いです。
―完全に喉を殺しにかかってるっていう。
中山 でも、美怜ちゃんは普通に出るんですよね。
真山 そうなんですよ。
柏木 ミックスボイスなのかな。地ではないよね。
真山 地ではないかもね。でも、「喉の調子が悪い」って言いながらあの声が出るからすごいなって。
柏木 「ウソつくなよ!」っていつも思うもん。「出てるじゃん!」って(笑)。
真山 しかも、キレイに出るんですよ。だから、そうやって歌ってるのを聴くと「今日も美怜ちゃんは元気だな」って思う(笑)。
―「勉強してない」って言いながらいい点を取るパターンだ。
中山 うん、それだそれだ!
真山 そう、器用なんですよね。美怜ちゃんのそういう器用さってこれまで伝わってなくて。これまでのエビ中ではかわいらしい部分を担ってたけど、この曲は美怜ちゃんのカッコよさが全面に出てるし、これからも印象が変わっていくだろうなって。美怜ちゃんの新たな一面が感じられる曲だと思います。
―イメージが変わると言えば、「シングルTONEでお願い」の莉子さんの落ちサビですよ。
柏木 ああ、これね! 大好き!
真山 うん、かわいい。
中山 でも、歌い方が最初と全然変わってるんですよ。レコーディング前にいつもボイトレの先生と1時間トレーニングをするんですけど、1時間じゃ足りないぐらい、イチから私の歌い方を変えるみたいな感じで(笑)。この曲も自分では「これでいいのか?」って思ってたんですけど、先生が「今回の歌い方はそれなんだよ!」って言ってくださって。それでも「本当にこれでいいのか……?」と思いながらレコーディングしたら、結局、それでよかったっていう。
―迷いながらやったものが正解だったんですね。あがったものを聴いてみてどうですか?
中山 正直、ライブでやるのが怖い(笑)。
柏木 確かにこれはね! この曲のレコーディング、ほぼ息みたいな感じでしたよ。囁いちゃって。
中山 マイクとの距離感がよくわからなくなっちゃって(笑)。
―「SHAKE! SHAKE!」の歌穂さんは声が笑ってますね。
真山 歌穂ちゃんはもともと倍音がある歌声で、裏声が苦手ってぐらい地声でスコーンといけちゃうタイプだから、「SHAKE! SHAKE!」はぴったりなんですよね。歌穂ちゃんは最近、大人になることについて悩んでたらしいんですけど、この曲のおかげでその悩みから抜けられたみたいで。<私、このまま 何も知らないまま歩いていく スキップしてさよなら>っていう歌詞から学んだらしくて、その喜びみたいなものも感じられますよね。
―<大器晩成さ>も裏声じゃないですよね。
柏木 裏じゃないですね。2番の私と真山は裏にいきました。無理でした。地声で出したら強くなっちゃうから。
真山 そう。だから、歌穂ちゃんみたいにニコニコしたまま出せるのはすごいよね。
柏木 歌穂ちゃんは一時期、私とか真山みたいな太い声に憧れてた時期があったって言ってましたけど、逆に「こっちも小林の声はうらやましいんだよ!」って。
真山 すごいうらやましい。
柏木 それぐらい、あの声は歌穂にしか出せないから、自分の武器としてずっと持っててほしいですね。何にも憧れなくていいよ! あなたはあなたでいいんだよ! って。
真山 唯一無二だよね。
―そして、先ほども言いましたが、安本さんは「熟女になっても」のイケイケなラップがハマるのかなと思ったら、今回のように比較的クールなラップもカッコいいというのが発見でした。
柏木 確かに。でも、ちょっとかわいい感じだよね。「SHAKE! SHAKE!」の<ハイ!>が好き。
真山 ああ、あそこね! 彩ちゃんは音感もいいですけど、リズム感も昔からよくて。リズムに感情を乗せるのがすごく上手だし、本人もそれを意識して歌ってるから、このアルバムでは彼女のリズム感がばちこんハマってると思います。