石若駿はさらなる地平へ、新世代のリーダーを引き受ける覚悟と今思うこと

ライブミュージックで見せてきた生き様

―『Answer to Remember』の曲って、今までにも書いてたんですか?

石若:書いていないっすね。例外的に「410 feat. Jua & ATRBand」は高校時代にバークリー音大へ留学したときに作った曲を10年ぶりに引っ張り出したんですけど、ほかは今回のために作った曲ばかりです。



―今回のアルバムは、ドラムの音が特徴的だと思うんですよ。例えば、KID FRESINOのアルバムとして出すなら、もう少し低音が出たものになると思う。でも、ここでのドラムはそういうヒップホップ的なサウンド作りでもないですよね。

石若:フレシノ君が参加した「RUN」は、彼がすごくこだわってくれたんです。こっちでマスタリングを一回やったんですけど、これは違うなとキャッチボールが何度かあって。それで最終的に、この曲に関してはフレシノ君のチームにミックスもマスタリングもやってもらいました。そこで面白かったのが、「普通だったら(自分の)声をもう少し出すかもしれないけど、これはバンド演奏のリアルなライブ感を出したほうがいいから」とか、「もっとドラムのハイの成分が出ていていい」と彼が言ってたことで、普段とは違う作り方になりました。

―そうそう、高音域のドラムの音がかなり強めで、低音域がそんなに強くない気がしたんです。ネオソウルっぽい曲もあるし、低音域がもう少し出てそうな音楽なんだけど、そういう作り方じゃないのがアルバムの特徴になっている。

石若:フレシノ君との曲に、他の曲も寄せていったところはありますね。最初は吉川さんがバキバキにマスタリングしてくれたんですけど、並べて聴いたときに「RUN」だけ異物感があったので、それ以外の曲をハイに寄せたサウンドに合わせるようにしました。



―ジャズ・ドラマーでいうと、クリス・デイヴはここまで高音域が出てないよね。もうすこし低音域に寄ってるし、本人のドラミングもそういう割合だと思う。でも、石若のドラミングはかなり高音域が多めだから、そこに素直に従ったバランスだなとも感じたんですよね。

石若:たしかに。

―ところで自分のドラミングの特徴って説明できたりしますか? 自分の演奏と共通点がありそうな人を挙げたりとか。

石若:曲によって、自分がやりたいイメージの音に寄せていくことが多いですね。ジャマイア・ウィリアムスっぽく行きたいとか、ジャスティン・ブラウン、ブライアン・ブレイド、ジム・ブラック……そうやってモードを切り替えたりしますね。でも、このアルバムに関しては、あまりそういうモードは出ていない気がします。

―ロバート・グラスパーやフライング・ロータス周辺のような音楽との共通点もあると思うんだけど、ドラムが全然違うなっていうのが僕の印象。ここでの石若みたいなタイプのドラマーって他にいないかもって思いながら聴いてました。そういうドラムがずっと鳴っていることが、このアルバムが他にない音楽に聴こえる最大の要因なのかなと。

石若:高校を卒業するまでは、本気でクリス・デイヴになりたいみたいな感じだったんですけどね(笑)。宮川純の『The Way』の「Just A moment」とか聴いてほしいです。これは99年のクリスのオマージュでした。



―ちなみに今の石若のドラミングは、クリス・デイヴに近いとは思わないけど、彼がようやく出したリーダー作『Drumheadz』(2018年)を聴いたときの感覚に近い印象はありました。『Drumheadz』って最初から終わりまでどこをどう切り取っても、ドラムが強烈にクリス・デイヴなんですよね。同じように『Answer to Remember』も超が付くほど石若のドラムなんですよ。それでここまでバラエティ豊かで、ポップさも持ち合わせた作品って他にないだろうから、すごく特殊な例だと思います。来年2月のリリースライブはどんなものになりそうですか?

石若:このアルバムの曲で、俺たちが普段通り「オラー!」ってやるのをお客さんが爆笑しながら見てもらえたら嬉しいです。俺たちはライブミュージックを大事にしているので、オーディエンスがその場に居合わせて、その楽しさを一緒に共有してくれたらいいなと。

―「ジャズミュージシャンって凄い」と思ってもらえたらいいですね。森山威男(※)くらい叩きまくると。

※山下洋輔トリオなどに参加してきた、日本を代表するジャズドラマー。爆発的なまでにパワフルなドラミングで知られ、彼のリーダー作は和製スピリチュアルジャズとしてUKでも高い人気を誇る。

石若:東京藝大の学園祭で、森山さんと45分くらいツインドラムをやったことがあるんですよ。観に来る人いるのかなって思ってたんですけど、ドラムセットを二台並べて演奏を始めたら、客がどんどん集まってきて(笑)。ステージの前方まで学生が寄ってきて、ロックフェスのように人で溢れかえっていました。

―それはすごいね(笑)。

石若:二人でずっとビートもなくフリーでドラムを叩きまくるのが45分間続くだけなんですけど、泣いてる人も爆笑している人も踊り狂っている人もいるわで。生き様っていうとアレですけど、そうやって見てもらえるのがいいなと思ったんですよね。

―カマシ・ワシントンのバンドもそうだけど、ジャズミュージシャンがバッキバキに演奏してるのを見ると、何をやっているかわからなくてもエネルギーやオーラに感動してしまうことがあるよね。石若駿もライブに来た人を圧倒させてくれるということですかね。

石若:そうですね。今までに自分がやってきたことの幅広さはあるけど、同時に俺はこれしかできないって演奏を見せられたらいいかなと思います。




『Answer to Remember』

2019年12月4日リリース

【通常盤】
¥2,700+税

【完全生産限定盤】
¥3,200+税
■特殊外装袋仕様
■Answer to Rememberプレイヤー
■トレーディングカード6枚入り

〈収録曲〉
Answer to Remember
TOKYO feat. ermhoi
Still So What feat. ATRBand
RUN feat. KID FRESINO
GNR feat. 黒田卓也
Cicada Shells feat. Karai
410 feat. Jua ATRBand
TOKYO reprise
GNR feat ATRBand
LIFE FOR KISS feat. Kaho Nakamura Band
RUN feat. ATRBand

“Answer to Remember” OHIROME GIG Vol.1
~石若駿 史上最大の祭り、よろしくワッツアップ~

日程:2020年2月4日(火)
場所:恵比寿LIQUIDROOM
時間:OPEN 18:00 / START 19:00
出演:石若駿、MELRAW(Sax)、中島朱葉(Sax)、佐瀬悠輔(Tp)、若井優也(Key)、海堀弘太(Key)、TONY SUGGS(Key)、君島大空(Gt)、MARTY HOLOUBEK(Ba)、新井和輝(Ba:from King Gnu)
柳樂光隆(DJ) and more
ゲスト:KID FRESINO、ermhoi、Jua and more

Answer to Remember公式サイト:
https://www.sonymusic.co.jp/artist/AnswertoRemember/

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