マフィアのボスを殺した陰謀論信者の自供、正式に証拠として認められる

フランチェスコ・カリ氏殺害の裁判を迎えるアンソニー・コメロ(Photo by Seth Wenig/AP/Shutterstock)

ガンビーノ・ファミリーのボス、フランチェスコ・“フランク”・カリ氏の殺害容疑に問われている陰謀論者、アンソニー・コメロ被告(25歳)が米国時間12月5日に出廷し、判事は被告の自供に法的証拠能力があるとの裁定を下した。被告側の弁護士は、事情聴取当時の被告の心身状態を理由に、自供の撤回を求めていた。

コメロ被告はマフィアのボスであるカリ氏殺害の動機について様々な理由を挙げていたが、最終的には、カリ氏が「ディープステート」の一味だと考え、彼を抹殺してドナルド・トランプ大統領を救おうとした、と弁護士のロバート・ゴットリーブ氏に語った。コメロ被告は、政府職員がトランプ大統領の失墜を企てているという陰謀論、Qアノンの信奉者を自認している。

「被告はガンビーノ犯罪ファミリーのボス、フランチェスコ・カリ氏がディープステートの主要メンバーであると固く信じ、市民の手で捕らえるべきだと考えたのだ」と、ゴットリーブ弁護士は裁判書類で述べている。

ゴットリーブ弁護士によれば、コメロ被告は警察から3時間半に及ぶ事情聴取を受けた際、心身共にまともな状態ではなかったという。スタテンアイランド・アドバンス紙によれば、ゴットリーブ弁護士は法廷でこのように主張した。「彼がHIV陽性で、投薬を受けていたことは警察も知っていました。激しい嘔吐を伴うことも知っていました。痛みはあまりに激しく、このような事情聴取は、自らの意思に反して強制的な状況に置かれることに等しい行為です。さらにその上、身体疾患のみならず妄想症も加われば、自供は非自発的であるといえます。個々の情況を総合的に斟酌すべき事例です」

しかしコメロ被告は国の精神鑑定を受けることを拒否し、裁判に手を貸さなかった。「私は、被告が協力しなかったものと判断いたします」と、ウィリアム・E・ガーネット判事は述べた。

またガーネット判事は、協力を拒否した場合、心神喪失の抗弁が無効になるなど、なんらかの結果が伴うことになるとコメロ被告に警告した。

これに対するコメロ被告の返答は「それで全く問題ありません」

すると判事は、コメロ被告に2020年1月3日までに検察及び弁護側の精神鑑定を受けるよう求め、「その際には適切な裁定を申し渡すことができるでしょう」と述べた。

しかし、コメロ被告の心神喪失の抗弁は珍しいものではない。精神障害を専門とするニューヨーク・ロー・スクールのマイケル・パーリン教授もニューヨーク・タイムズ紙に語っているように、「極めて重篤な精神疾患を抱えた人が、全くおかしなある種の政治的動機で罪を犯して精神異常を主張したケースは、これまで本当にたくさん実在しています」

Translated by Akiko Kato

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