社会から受ける「男らしさ」というプレッシャー、助けを求められずに陥るアルコール依存

それには主に4つの理由があります。1つ目は、飲み過ぎによって、職を失ったり、暴力沙汰を起こして逮捕されたり、離婚することになったりして、経済的・社会的に孤立し、追いつめられてしまうこと。2つ目に、長期間の多量飲酒はうつ状態を引き起こし、すでにうつ病になっている人の場合は。さらに病状を悪化させてしまうこと。3つ目に、アルコールは抗うつ剤や睡眠薬の効果を減じてしまい、精神科治療の妨げになること。そして最後に、アルコールの作用で衝動的になり、自殺に対するブレーキがかからなくなってしまうことの4つです。

「アルコールとうつと自殺は死のトライアングルをなしている」という考え方を広めたいという松本俊彦先生は、以下の3つを知っておいて欲しいと3つの標語にまとめています。

1. 追いつめられたときに、飲みながら物を考えるな
2. 眠れないときには専門医に相談を!
3. 酒は二合まで!

前回と今回で、男性・女性それぞれが社会の中で「生きづらさ」を抱え、それがメンタルの不調につながってしまっていることを見てきました。単に男性女性というだけでなくLGBTQも含めて、そうした分類以前に私たちは皆同じく「人間」です。同時に、一人一人が多種多様な特性を持っています。その特性のために無用な圧力や差別を受けることなく、それぞれが尊重されるような世界にしていくべきではないでしょうか? 

参照 
ジェイムス・ブレイク、自分の曲が“sad boy”と呼ばれることに反論「不健康で問題があると常々思っていた」(billboard JAPAN 2018/05/29
http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/63826/2

ジェイムス・ブレイク、うつ病や不安神経症に苦しんだ過去を告白「話すことで悪いイメージを取り除く責任がある」(billboard JAPAN 2018/07/03)
http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/65093/2

『アルコールとうつ・自殺—「死のトライアングル」を防ぐために』(松本俊彦著・岩波ブックレット897



<書籍情報>




手島将彦
『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』

発売元:SW
発売日:2019年9月20日(金)
224ページ ソフトカバー並製
本体定価:1500円(税抜)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909877029

本田秀夫(精神科医)コメント
個性的であることが評価される一方で、産業として成立することも求められるアーティストたち。すぐれた作品を出す一方で、私生活ではさまざまな苦悩を経験する人も多い。この本は、個性を生かしながら生活上の問題の解決をはかるためのカウンセリングについて書かれている。アーティスト/音楽学校教師/産業カウンセラーの顔をもつ手島将彦氏による、説得力のある論考である。

手島将彦
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。2000年代には年間100本以上のライブを観て、自らマンスリー・ライヴ・イベントを主催し、数々のアーティストを育成・輩出する。また、2016年には『なぜアーティストは生きづらいのか~個性的すぎる才能の活かし方』(リットーミュージック)を精神科医の本田秀夫氏と共著で出版。Amazonの音楽一般分野で1位を獲得するなど、大きな反響を得る。保育士資格保持者であり、産業カウンセラーでもある。

Official HP
https://teshimamasahiko.com/


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