ペトロールズの2ndアルバムは「音楽の可能性」を解き放った傑作

4年ぶりとなる2ndアルバムの内容

暗号のようなタイトルは、曲タイトルの頭文字をそのまま並べたもので、アルバムとしてのコンセプトは特になく、「今聴いてほしい曲を並べた」ということかと思うが、作品のクオリティは今回も申し分ない。洒脱なコードワーク、音数を絞ったタイトなアンサンブル、流麗な多声コーラス、朴訥としていながらも色気のある歌声に、少しのユーモアももちろん健在。各楽器の多彩な音色も楽しく、コーラスのかかった艶やかなクリーントーンのギターを軸に、歪みは極力抑えつつ、曲によってはフィルター系のどぎつい音をギターとベースがともに鳴らす。また、ドラムもエアーを含んだ生々しい音と、ゲートリヴァーブをかけた打ち込みのトラックのような質感が同居し、音圧戦争からいち早く抜け出していた彼らのサウンドデザインにはやはり一日の長がある。前作と比べるとやや落ち着いたテンション感も含め、今ならスティーヴ・レイシーやトム・ミッシュとも並べて聴ける。

一方、歪みと空間系のエフェクトを併用したギターに、ローの強く出たベースを組み合わせた本作随一のサイケナンバー「GO AHEAD」は、ブレインフィーダー周辺とのリンクも感じられるような仕上がり。ただ、「クラブミュージックをバンドで再現する」というのとはニュアンスがやや違うように思うし、もちろん、星野源が『POP VIRUS』でSTUTSを迎えてビートミュージックに接近した発想とも異なる。やはり、ペトロールズはあくまで3ピースバンドであり、ある種の制約の中でこそ生まれるクリエイティヴを楽しんでいる雰囲気がある。クールでスムースだが、どこかしら歪でドープなのは、それがゆえだろう。

そんな彼らの探求心を最もよく表しているのが、アルバムのラストナンバー「WAON」。〈決めたよ この場所なら このコンビネーションだよね/いつでも 悩みながら 選びに選ぶこの和音〉と、曲作りの工程をそのまま歌詞にし、〈容易じゃないな/いつまでも愛してほしい〉と綴った後で、最適解が見つかったときの甘美な瞬間を、文字通りの美しい和音のみで表現する、何とも感動的な一曲だ。ペトロールズが起こしたルネサンスとは、「意味を付与する説明的な言葉をはぎ取り、音楽の可能性を解放する」ということだったと、この「WAON」という曲は、『GGKKNRSSSTW』というアルバムは、雄弁に物語っている。よって、ツラツラと書き連ねてきたこの原稿を締め括る言葉は、結局「とにかくいいから聴いてよ」なのだ。

<INFORMATION>


『GGKKNRSSSTW』
ペトロールズ
発売中

01. GIRL
02. GO AHEAD
03. KAMONE
04. KOMEKAMI
05. NIGERO
06. REVERB
07. SEKKINSEN
08. SHAPE
09. SMOOTH ME
10. TANOC
11. WAON

https://www.petrolz.jp/

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