史上最高の「クリスマス・アルバム」トップ25

4位『A Charlie Brown Christmas』(1965年)

クールでリラックス感あふれるウエスト・コースト・ジャズ——カリフォルニアの贅沢で気ままな生活の広告塔として誕生した音楽だ。そんな音楽が、雪が降るなか親友のライナスに向かってクリスマスのせいで気が滅入ると文句を言っている、実存主義的な問題で頭がいっぱいのチャーリー・ブラウンと関連づけられるなんて、結構皮肉だ。『A Charlie Brown Christmas』に収録されている「Skating」や「Christmas Is Coming」などでは、ビンス・ガラルディ・トリオが明るい予感と冬らしい内省の完璧なパランスを体現している。アメリカ音楽のなかでももっとも視覚的な作品のひとつだ。『ピーナッツ』の生みの親チャールズ・M・シュルツは「キャラクターたちが歩いたり、ちょっと飛び跳ねたりするのが音で表現されている」とコメントした。



3位 ジェームス・ブラウン『ファンキー・クリスマス』(1995年)

2006年12月25日にこの世を去ったジェームス・ブラウンは、創作欲がピークを迎えていた時期にクリスマスをテーマにしたアルバムを3枚レコーディングした。ひとつは1966年の『James Brown Sings Christmas Songs』、もうひとつは1968年の『A Soulful Christmas』、3作目が1970年の『Hey America It’s Christmas』だ。各アルバムから厳選された名曲が『ファンキー・クリスマス』という素晴らしい作品に納められている。1960年代、ブラウンは自らのファンクの改革者としてのイメージを通じてロックを再解釈しようとしていた。だから、陽気なホリデーシーズンにいくらかのソウルパワーを込めたとしても不思議ではない。「Merry Christmas Baby」や「Please Come Home for Christmas」などのR&Bバラードもあれば、「Go Power at Christmas Time」や「Soulful Christmas」などのグルーヴ感満載の楽曲、「Santa Claus Goes to the Ghetto」や「Let’s Unite the Whole World at Christmas」のように社会的意識を歌ったリアルな楽曲もある。サンタと同じように、ミスター・ダイナマイトも世界中の少年少女のために空になることのないプレゼントの袋を用意していたのだ。タイトルが印象的な1970年発売の『Hey America It’s Christmas』では、「白でも黒でも青でも緑でも/見たことのない人でも/一緒になろう!」と力強く訴えかけている。



2位 エルヴィス・プレスリー『エルヴィス・クリスマス・アルバム』(1957年)

エルヴィス・プレスリーが1950年代のアメリカにおいていかに革新的だったか知りたいと思わないか? 「ホワイト・クリスマス」の作曲家アーヴィング・バーリンは、1957年に発表されたエルヴィスのバージョンを聴いて憤慨したあまり、ラジオでの放送を禁止しようとした。でも、バーリンごめん。ラジオ放送で禁止されるどころか、『エルヴィス・クリスマス・アルバム』は1カ月にわたってビルボードチャート1位に君臨し続け、さまざまなバージョンとともに2000万枚近い売上を記録した。「Santa Bring My Baby Back to Me」に代表されるように、同作は軽快なロックと「ああベツレヘムよ」などの昔ながらの人気作品に敬意を示したバージョンの見事な融合であり、エルヴィスのルーツであるカントリーやゴスペルにも触れている(「Take My Hand, Precious Lord」)。もちろん、名曲は「クリスマス・ブルー」だ。でも、エルヴィスは無垢なイメージのどの曲にもちょっとした含みを持たせつつ、バッドボーイとしてのイメージをわずかながらも浄化し、栗を焼くようにみんなのハートを温められることを証明している。



1位 フィル・スペクター『クリスマス・ギフト・フォー・ユー・フロム・フィル・スペクター』(1963年)

音楽史上最高のクリスマス・レコードであることは言うまでもないけど、『クリスマス・ギフト・フォー・ユー・フロム・フィル・スペクター』は正真正銘のポップ・ミュージックの名盤でもある(ローリングストーン誌は、グレイテスト・アルバム500で同作を142位にランクインさせている)。スペクターが開発した“ウォール・オブ・サウンド(音の壁)”という音楽制作方法がドラマに壮大さを加える一方、フィルズ・レコードのクルーは烈火のようなロックでホリデーシーズンのヒット曲パレードに華やぎを添えている。「サンタが街にやってくる」でクリスタルズが煙突の下でパーティに興じるなか、ロニー・スペクターは「フロスティ・ザ・スノウマン」を熱気で溶かして表庭の水たまりにしてしまう。クラシックなブリル・ビルディングのオリジナル曲「Christmas Baby, Please Come Home」でダーレン・ラヴは全身全霊で壮大かつ悲しいロマンチックバラードを歌い上げては、冬のおとぎの国をティーンの不毛地帯に変えている。ブライアン・ウィルソンがいちばんのお気に入りのアルバムだと言ったのにもうなずける。

Translated by Shoko Natori

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