史上最高の「クリスマス・アルバム」トップ25

ビング・クロスビーにボブ・ディラン、さらにはモータウンやデス・ロウをはじめとするレコードレーベルなど。ホリデーシーズンにぴったりの名盤をローリングストーン誌がランキング形式で紹介する。

ビング・クロスビーのクリスマス・ソング、「ホワイト・クリスマス」がレコード史上もっとも売れたシングルとして書籍『ギネス世界記録』に掲載されているのは、意外でもなんでもないことだ。クリスマス・ミュージックには、宗教さえも超えてしまう普遍性がある。その理由は、ユダヤ教徒の家庭に生まれたものの、クリスマス・ソングを愛するあまり2009年にクリスマス・アルバムまでリリースしたボブ・ディランに尋ねてほしい。ギャングスタ・ラップからジャズ、レゲエ、インディーポップ、さらには熱唱系からロックまで……エルヴィス・プレスリーの「ブルー・クリスマス」や「サンタが街にやってくる」などのお馴染みの名曲を打ち負かしたい、というアーティストの衝動に限界なんて存在しない。ここでは、ローリングストーン誌が選んだ史上最高のクリスマス・アルバム トップ25を紹介しよう。

25位 ウィーザー『Christmas with Weezer』(2008年)

何百年という伝統を誇るクリスマス・ミュージックにずっと欠けていたものがひとつあるとしたら、それはアイロニーだ。そんなアイロニーをたっぷり盛り込んだ6曲を収録しているのがEP盤『Christmas with Weezer』。笑えることに、ウィーザーはバンドが得意とするフラットなパワーポップスタイルをぶち込むのに、クリスマス・ソングのなかでもとくに宗教色が強いものをあえてセレクトした。讃美歌「神の御子は今宵しも」で「いそぎゆきて拝まずや」と真面目くさって歌うリヴァース・クオモはかなり不気味で、乳飲み子イエスの誕生を祝うというよりは、ストーカーに近いものを感じる。ポップなメタルバージョンの「クリスマスおめでとう」にいたっては、イギリスの作家チャールズ・ディケンズの世界から飛び出してきた非行少年が「いますぐイチジク入りのプディングをくれないと、このしょぼいヴィクトリア朝の孤児院を燃やしてしまうぞ!」と脅しているようにも聴こえる。



24位 『Christmas Joy in Latvia – Latvian Christmas Cantatas』(2012年)

本物の伝統的なクリスマス・ミュージックを探しているなら、74歳のアンドレイス・ヤンソンスが指揮をとるニューヨーク・ラトヴィア・コンサート合唱団による、荘厳で美しいクリスマス・キャロルが収録された『Christmas Joy in Latvia – Latvian Christmas Cantatas』に勝るものはない。古いものと新しいもの、さらにはキリスト教とそれ以外の宗教をとりまぜたバルト諸国ならではのクリーンなスタイルによるカンタータ(声楽曲)は、さまざまな記憶に彩られたアメリカの移民体験を力強く彷彿させる。「On Christmas Eve」が昔ながらのブロードウェイミュージカルを連想させる一方、「My Lovely Flax Field」はより異国情緒あふれる、遠い過去とのつながりを感じさせる。クリスマス・ミュージックはもはや宗教的な意味を持たなくなったと思っているなら、「The Word Was Made Flesh」を聴けばいい。スピリチュアルな感覚が戻ってくるだろう。



23位 ジェイコブ・ミラー『Natty Christmas』(1978年)

1978年にリリースされた、明るいながらもアイロニーを感じさせるアルバム『Natty Christmas』の「クリスマスおめでとう」のカバーで「最高のクリスマスとダンスホールでの新年をお届けしよう」とジェイコブ・ミラーは歌う。それは、インナー・サークルのフロントマンが27歳で早すぎる死を遂げるわずか2年前のことだった。ミラーと相棒のDJ Ray Iは本当に楽しそうに「シルバー・ベルズ」を歌い(なんと9分という超大作)、「ひいらぎかざろう」はラバダバスタイルのレゲエバージョンに仕上がっている。そしてここで質問。「All I Want For Ismas」で繰り返し登場するアイテムがあるけど、それはいったい何かな(ヒント:マリファナ)?



22位 スフィアン・スティーヴンスの『Songs for Christmas』(2006年)

『Songs for Christmas』に収録されているラブソング「Come On! Let’s Boogie to the Elf Dance!」を聴くもよし、これをサンタのトナカイがクリスマス・イブ恒例のトイレ休憩をする裏庭に積もった雪に埋めるもよし。いずれにしても、ブルックリンを拠点に活動しているインディーポップのソングライター、スフィアン・スティーヴンスの5曲入りEP盤『Songs for Christmas』は、クリスマス・ソングを再評価させてくれる有数の独創的なアルバムのひとつだ。定番曲へのアプローチは極めてキュートだし(バンジョー版「アメイジング・グレイス」をチェック)、オリジナル曲は定番曲の新しい聴き方を提案してくれる。(「ひどい1年だったかもしれないけど/ハッピーでいよう/パパの昇進とか/プレゼントもあるんだから」と歌う「It’s Christmas Let’s Be Glad」は、皮肉たっぷりの乾杯の音頭みたいだ)。悲しそうに帰るサンタの小人たちに対してもスティーヴンスは親切心を忘れない。



Translated by Shoko Natori

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