KISSのジーン・シモンズに日本で直撃 「最後の来日公演」は本当にラストなのか?

―それはそれは(苦笑)。ところでKISSのように長い歴史を持つバンドの場合、ファンが聴きたい曲というのもたくさんあるだけに、セットリストの選考もなかなかの大仕事ですよね?

ジーン:確かに。そこで心掛けるべきは、ファンの言い分に耳を傾けること、ソーシャルメディアを通じてファンが何を求めているかを知ること、彼らと話をすることだ。たとえばキミがサザンオールスターズのファンだとして、彼らのライヴに出掛けたならば、自分にとって意味のある曲を聴きたいと思うはずだ。もしもサザンオールスターズの面々が、その曲を40年間演奏し続けて飽きていたとしても、そんなこととは関係なくね。確か、彼らは40年続いているんだよね?

たとえば私自身、ローリング・ストーンズを観に行けば、やはり「サティスファクション」を聴きたいと思う。自分でチケットを買ったんだから、ボスは私自身だ。仮にストーンズ側があの曲をやることにもはやウンザリしていたとしても、そんなことは関係ないし、バンドはそういう曲を演奏しなければならない。それと同様に、我々は「ロックン・ロール・オール・ナイト」を毎晩欠かさず演奏する。たとえば今回は大阪でも公演があるけども、なかにはその大阪公演にしか観に来られない人たちもいる。その人たちも絶対、あの曲は聴きたいはずだからね。要するに、我々自身がその曲についてどう感じているかは二の次なんだ。正直に言うが、今現在の私は「ラヴィン・ユー・ベイビー(I Was Made For Lovin’ You)」という曲に夢中だとは言えない。あんなふうに“♪ドゥ~ドゥ~ドゥ~”とか歌いたいわけじゃない(笑)。しかし、あの曲をやるとファンがクレイジーになることはわかっているし、みんなが一緒に歌ってくれるととても興奮させられる。そういうことなんだ。



―たとえばあなた自身がプレイしたいけどもセットリストに組み込むのは難しい曲、というのもあるはずですよね?

ジーン:そうだね。たとえば私は「エルダーの戦士」という曲が気に入っている。「ウィ・アー・ワン」もそうだ。これまでライヴでは1回か2回しかやったことがないはずだが、いつもやりたいと思っていた曲だ。何故ならあの曲は、私にとって意味があるからだ。“Everywhere I go/Everyone I see/And I see my face looking back at me”と歌詞が続いていく。たとえばエイリアンが地球に降りてきたら、その目には日本人だろうと黒人だろうと白人だろうと同じに見えることだろう。地球人たちがそれぞれに違うんだと言ってみたところで、他の惑星からやって来た宇宙人からすれば「何を言ってるんだ? みんな同じじゃないか」ということになる。沖縄に住む人たちも、日本の北のほうに住む人たちも同じであるようにね。住んでいるところが南なのか北なのか、都会なのか田舎のほうなのか。そういうことによって人々は違いを主張することがある。しかし私は“We Are One”という考え方が好きだ。これは重要なことだし、すべての人たちに向けてのメッセージになり得るものだと思っている。どんな肌の色をした人間だろうと、皮を剥げば中身はみんな同じだ。身体のサイズには違いがあるかもしれないが、皮膚の下にはみんな赤い血が流れている。みんな、同じなんだ。

―セットリストについてひとつ興味深いのは、今回のツアーで披露されてきた「サイコ・サーカス」や「クレイジー・クレイジー・ナイツ」といった曲が、ここにきてクラシック・チューンの仲間入りを果たしているように感じられることです。発表からそれぞれ20年、30年以上を経て、70年代の楽曲と同列の存在になっているというか。

ジーン:その通りだ。憶えておくべきは、楽曲というものは単なる楽曲として以上の存在価値を持ち得るということだ。大好きな曲を自分の葬儀でかけてくれという人がいる。子供が生まれた時にはこの曲を、結婚式ではこの曲を、というのもあるだろう。KISSには、ポールがマイケル・ボルトンと共作した「フォーエヴァー」という曲がある。これまで実に多くの結婚式で、あの曲は使われてきた。ラスヴェガスのリオ・ホテルにはKISSのミニ・ゴルフ・コースがあるが、あのホテル内にあるホッター・ザン・ヘル・チャペルでは挙式をすることもできる。そこには私のようないでたちの男がいて、新郎と新婦に「わたしの言うことを復唱しなさい」と言い、(「ラヴィン・ユー・ベイビー」の歌詞そのままに)“I Was Made For Lovin’ You”、“You Were Made For Lovin’ Me”と言わせるんだ。そこでは、そうやって契りを交わすんだよ。

―すごい。歌詞がそのまま誓いの言葉になっているわけですね。

ジーン:KISSの音楽は、何百万という人たちにとっての人生のサウンドトラックになっているんだ。それを自覚できていないケースもある。映画を観に行った時に、全体を通じて音楽が重要な役割を果たしていることに気付かないことがあるのと同様にね。


Photo by Igor Vidyashev

―映画と言えば、あなた方が映画を制作するという情報があります。これは、事実ですか?

ジーン:イエス。とはいえ、これは時間のかかるものだ。リンゴの種を蒔いても、実際に木が育って実をつけるまでに年月がかかるのと同じようにね。

―つまり、すでに映画の種は蒔かれた状態にあるわけですね?

ジーン:そういうことだ。そしてちゃんと水を与えている。これは、時間をかけて進めていくプロジェクトだ。この先にはブロードウェイ・ショウもあればラスヴェガスのショウもあるだろう。そしてさらには“違うKISS”のショウもね。このバンドではないKISSのツアーが行なわれる日も、将来的にはやって来るはずだ。

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