J-POPの歴史「1980年と1981年、劇的だった80年代の幕開け」

オフコース、浜田省吾さん、RCサクセション、山下達郎さんと、いい4連発でしょ? 自分で悦に入って、好きな曲を並べているだけなんですが、70年代、達郎さんは本当に思うような結果が出なかったんです。シュガーベイブの後、ソロになってデビューアルバムをニューヨークで全部作ろうと思ったんだけどお金がなかったり、苦い想いをしながら活動していった。大阪のディスコで「BOMBER」で火がついて、彼も次が見えたという状態だったんですね。RCサクセションとオフコースはレコード会社も一緒でした。シュガーベイブと、浜田省吾さんがいたバンド・愛奴はデビューが同じ年なんですよ。ソロになったのも同じ年ですね。そして79年にようやくツアーができるようになった。同じような段階を踏んでいますね。達郎さんはこの曲がマクセル・カセット・テープのCMソングに大抜擢されて、高らかな始まり方で80年代を迎えたわけです。

これも80年2月にでました。シャネルズの「ランナウェイ」。

シャネルズ / ランナウェイ


作詞・湯川れい子さん、作曲・井上大輔さん(元・井上忠夫さん)。この頃、みんなでよく飲みにいって、スナックでカラオケもやったんですよ。この曲もよく歌ったなあっていう記憶があります。靴墨を顔に塗っていた日本音楽史上初の黒人、マーチンさん(=鈴木雅之)がよくステージで言っていることです。アマチュア時代から、鈴木雅之さんは達郎さんと知り合いだったんですね。セコハン・レコード屋さんというのがあるでしょ? そこに手袋をして早くLPをめくっていく人がいるんです。1枚ずつタイトルとアーティストを調べて、気に入ったものをすぐに引き抜くんですね。あいついつもいるな、っていうのが達郎さんと鈴木雅之さんで、お互い顔見知りだったという関係ですね。しかも、2人は大瀧詠一ファミリーです。鈴木雅之さんは、オフコースのファンだったんです。まだメンバーがたくさんいたときのオフコースの70年代のデビュー曲「群衆の中で」をテレビで歌っているのを見て、すぐにレコード屋さんに買っている。実はガロとか、ものすごく詳しいんです。そういう面を見せるようになったのも、この数年でしょうね。シャネルズの登場で、マイナーな極地だったドゥー=ワップが茶の間に広がりました。達郎さんの中野サンプラザを観に行ったとき、ステージから「シャネルズいるか?」って言ったのがデビューした直後か前の年かな。そういう交友関係ということになりますね。

続いては、80年3月発売、佐野元春さん「アンジェリーナ」。

佐野元春 / アンジェリーナ


先ほどまでは、70年代に不遇だった人たちが登場しました。そういう人たちの終わりなき疾走が始まったのが80年。シャネルズと佐野さんは80年がデビューです。つまり来年がデビュー40周年ですよ。今年11月に佐野さんの『或る秋の日』っていうアルバムが出たんですね。これが、しみじみとしたいいアルバムなんです。40周年を前にしたブレイクのようなアルバムでした。ライブを観に言ったら元気だったんですよ。お客さんもスタンディングで立たせていましたね(笑)。

佐野さんは80年のデビューなんですが、決して順風満帆だったわけではありませんでした。高校のときから音楽活動をしていて、大学では「EastWest」などコンテストにも出場していたんですけどデビューできなかったんですね。その後、ラジオ局のディレクターをやり、アメリカの取材に行ったとき、サンフランシスコの空港で知り合いのミュージシャンが旅支度をしていて、「どこ行くの?」って訊いたときに、そのミュージシャンが「東海岸でやり直すんだ」と行って旅立っていった。その「やり直す」と言う言葉に刺激されて、ラジオ局のディレクターをやめてプロのミュージシャンになるんだということでデモ曲を作って、EPIC・ソニーのプロデューサー小坂洋二さんの目に止まってデビューすることになるんです。デビューするときのインタビューの発言が格好よかったですね。「胸が張り裂けそうだったから」。こういうデビューでありました。1981年、ナイアガラ・トライアングル。佐野元春さん、杉真理さん、大瀧詠一さん。こういう人たちが世代を超えた新しいポップスの担い手として、世の中に出ていくわけですね。

1980年の年間チャート1位を御記憶でしょうか? もんた&ブラザーズの「ダンシングオールナイト」だったんです。もんたよしのりさんも、70年代に思うような活動ができなくて、関東から関西に拠点を移したりする中で、これが爆発的に売れた。そういう幕開けでもありました。1980年12月はジョン・レノンが亡くなったということもありました。殺害されました。80年という年号がいろんな意味の歴史の区切りになった。そんな年末でありました。1980年3月に発売されたのがこのアルバムです。大瀧詠一さん『ロングバケーション』。1曲目「君は天然色」。

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