「尊敬と崇拝は違う」FINAL SPANK HAPPYと語る男女のパートナーシップ

#MetooとTABOO

─ポップスをやっているとはいえ、「エイリアンセックスフレンド」では、「甘いペニス」という単語が冒頭で歌われていて驚きました。今、表現の規制がどんどん厳しくなっているので。


冒頭からODが「苦いキス 甘いペニス」と切なく歌う「エイリアンセックスフレンド」。FINAL SPANK HAPPYは基本的にステージ上でリップシンクでパフォーマンスする。

BOSS:ははは。あんなもんでエロいエロい動揺されてもねえ。今って、放送コードとか映倫のような決まりがあってガチガチですよね。

ネットで性的ファンタジーは、胃もたれするぐらい見放題、だからこそ、なんでしょうか、アイドルや爽やかなバンドとか、青春を歌っているフォーキーな楽曲では絶対に性的な言葉やモノは越境しない。それは関税でもあり放送コードでもあります。そんなもん不自然だなと思っていて。令和のシティ・ポップは、チラッとペニスという単語が入っていても大したことじゃないと思うんですよ。

だってシティ・ポップって街で生きている人たちのラブストーリーなわけだから......性愛ありますよね?(笑)。でも描かないっていうのはちょっと病的に古めかしいなと。キスは歌われるのにペニスは歌われない。

小田:タブー化しちゃいますよね。

菊地:TABOOレーベルが潰れる訳ですよ(笑)。

BOSS:多くのコンサバティブな人によって、現場は硬直しますよね。まぁでもだから面白いんだけど。

肩こりがあるから肩もみがあるように、音楽に規制コードがあるから刺激を与えて揉みほぐせるわけですよ。切ない曲のファーストルックにあえて「ペニス」という単語を持ってくる。騒ぐ人は騒ぐでしょう。でも鎮火するじゃないですか。「倫理上、ラジオで流せません」と言われたことないですし。

OD:NHKラジオで流れてたじゃないスか〜。朝から(笑)。

(一同:爆笑)





Photo by Kana Tarumi

小田:私自身、#Metooの文脈がある時代、自分自身の活動に関して当初は自己検閲というか慎重になりすぎてしまった時期も正直あったんです。でも、自分の中にピュアな欲望ってあるじゃないですか。それをタブーにするのではなくて、認めて向き合った上でサラっと言ってしまったほうが良いんじゃないかって思うようになったんですよね。

実際、「エイリアンセックスフレンド」のライブ映像がYouTubeにアップされた時、他人事ながらどんな反応があるのか気になっていたんですけれど、意外とサラッしていて。まぁ……海外の歌詞って普通にもっと自由ですよね。

─日本が過剰に抑制しているところはありますよね。

BOSS:海外には作詞にコードなんかないですからね。

菊地:無さすぎるけどな(笑)。

OD:歌詞以外にも、海外のアーティストさんがすげー露出の多い衣装を着ていても、人にもよるデスが「いやらしい」より「かっこいい」じゃないスか。一見エロく見えるもんでも、そんなもん自分の気持ちひとつじゃないスか(笑)。

小田:セクシーだからといって媚びているわけではないし、逆にボーイッシュだからといってサバサバしているとも限らない。どんな服を着ていても、どんな歌詞を歌っていても、多かれ少なかれ矛盾みたいなものが出てくると思うんですが、その矛盾こそ魅力だとも思っているので、あえてサラッと歌うのが良いなと思っていたら、ODが気負わず普通に可愛く歌っていて(笑)。

BOSS:シティ・ポップを標榜しつつ、綺麗で切ない楽曲で青春や恋愛だけのエモさで泣かせて終わり、というのも……我々はもう十分に大人ですからね。私なんか壮年ですよ(笑)。ペニスという言葉は極端ですが、歌詞全般に渡ってちょっとエロい要素を散りばめています。でもそれは単なるガジェットというか、撒き餌にすぎなくて、それを切ないところに落とし込む。大人の切なさですね。

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