トランプ大統領のメモに書かれた「私は何も望んでいない」の真意

「対処メカニズムに欠けていて、自己や他者と精神的な繋がりを持てない」と専門家(Photo by Shutterstock)

つい最近、「I WANT NOTHING」と書かれたドナルド・トランプ大統領のメモがネットで話題になった。

「I WANT NOTHING. I WANT NOTHING. I WANT NO QUID PRO QUO (訳註:私は何も望んでいない 何も望んでいない 交換条件はいらない)」と走り書きされた1枚の紙は、今週の弾劾公聴会に合わせてトランプ大統領が用意したものだ。それほど多くの情報は書かれていないが、筆跡鑑定人のシェイラ・ロウ氏によると、大統領の筆跡から彼の心情について多くのことがわかるという。

「Oのいくつかは、輪を閉じるところに小さな突起のようなハネがあります。「word」のところがそうですね」と、彼女はメールでローリングストーン誌の取材に答えてくれた。「筆跡では、これはコミュニケーションを表す特別な箇所で、本来はきれいに閉じているべきなんですが、このように余分なハネがあると、――待てよ――これは嘘つきの兆候だ、と解釈されます」

ロウ氏は90年代初頭からトランプ大統領の筆跡を分析しているそうだが、彼女曰く大統領はSharpieというマジックペンを愛用していて、このことからも「贅の極みに惹かれる一方、なるべく労力をかけずにそれを手に入れたいと考えていることがわかる」のだそうだ。

ブロック体で大きく書かれている点については、「安心感への渇望と支配欲、そして尊敬されたいという願望を抱いている」ことの証だとロウ氏は見ている。1文字1文字が離れているのは「幼少期に経験したトラブルと折り合いがつけられず、そのため人生で様々な敵を作りやすい人物だということです。対処メカニズムに欠けていて、自己や他人と精神的な繋がりを持ちにくいのです」

かの有名な、ツンツン尖った署名については?

「ある種の傲慢さは、大統領の署名からもはっきり見受けられます。まるで有刺鉄線のようですね。たくさんの鋭角な部分は敵意の現れです」とロウ氏。「署名の終わり、「p」の最後の一画は一旦後戻りして、署名を貫いています。名は自分そのものを表していますから、つまり自己破滅的だということです」

だが、犯罪筆跡鑑定は必ずしも決定的だと考えてはいけない。最近の研究では、「筆跡鑑定人の総体的な誤謬率はかなり高く、筆跡鑑定が法廷で証拠として信用に足るかどうかは疑問を禁じ得ない」との結果が出ている。この研究は筆跡鑑定の特定、一致の正確性に特化したもので、人物評価の研究ではない。だが一般的に筆跡鑑定は、しばしば批判的な立場の人々から「エセ科学」と呼ばれている。

現地時間21日は、当面予定されている弾劾公聴会の最終日だった。最後にウィル・ハード下院議員(共和党、テキサス州代表)は、7月25日のウクライナ大統領との電話会見でトランプ大統領が「頼みごと」「バイデン」という言葉を口にしたのは「不適切」で、「誤った外交政策」を示していることを認めた。それでもハード下院議員は、「大統領が賄賂や強要を行ったことを証明する証拠は出なかった」と締めくくり、いざ大統領弾劾の採決となった際には賛成票は投じないことを示唆した。

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE