米シラキュース大学の根深い人種差別問題 Airdropで送信された恐怖のファイルとは?

2019年11月14日、キャンパス内のバーンズセンターで座り込み抗議を行うシラキュース大学の学生(Photo by Jessica Tran)

現地時間18日の夜、米ニューヨーク北部の私立大学シラキュース大学のバード図書館に詰めかけた学生らは、見知らぬ恐怖のファイルをAirdropで受信した。

大学の学友会向けフォーラムにも投稿されたそのファイルには、今年初めにニュージーランドのクライストチャーチのモスクで50人以上の信者の命を奪った銃撃犯による過激な反イスラム的マニフェストが収められていた。「我々の仲間の存続、白人の子供たちの未来を守らねばならない」というメッセージがマニフェストと一緒に添えられていた。

白人至上主義者のマニフェストの投稿は、学生や大学側が緊張状態と呼ぶ時期の最後を締めくくった。学内では人種差別的・反ユダヤ的な事件が多発しており、雪の上に鉤十字が書かれていたり、校舎の壁に人種差別的なグラフィティが描かれていたり、男子友愛会のメンバーが有色人種の女子大生に向かって侮蔑の言葉を浴びせたりしていた。連邦および州の警察当局が呼ばれ捜査を行ったが、講義は休講にならなかった。当局からは、容疑者に関する情報はほとんど公表されていない。

「この一連の事件が恐ろしい最大の理由のは、たぶん未確認事項が多すぎることだと思います」と、22歳のシラキュース大学2年生は言う。「何も知りません。単独犯なのか、複数犯なのか、それとも集団で行動しているのか、白人主義者なのか、ひどすぎる冗談のつもりなのか、期末試験を中止させようとしているのか……いくらでも考えられます。一体自分たちは誰を、何を相手にしているのか分からないんです」

学生運動家たちは数日前から、大学側が学内の嫌がらせに効果的な対応をしていないと痛烈に非難していた。そして学生主導の座り込み抗議を呼びかけ、キャンパスに新設されたウェルネス施設バーンズ・センターを約1週間占拠している。大勢の学生が怖くて家を出られないと言い、教職員らにも団結を求め、講義を休講にするよう求めた。「緊張状態がピークに来ています」と言う21歳の有色人種の学生は、全米の白人至上主義者からの嫌がらせや大学側からの懲罰を恐れて、匿名という条件で取材に答えてくれた。「大学は、授業に出て全力を尽くせと言う。でも、いつ何時攻撃されてもおかしくない状況で教室に座っているなんて、想像できませんよ」

Translated by Akiko Kato

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