中川翔子インタビュー「もしかしたら5年どころか人生丸ごと詰まっているかもしれない」

―赤盤(完全生産限定盤)には、中川さん作・画の絵本『ちび太の聖火ランナー ~2020 ver.~』が付属されていて驚きました。

中川:家で今10匹の猫を飼っているんですけど、その中に18歳のちび太っていう猫がいて。猫の18歳って人間でいう90歳とか100歳なんです。何度体調が悪くなっても、自力でご飯を食べて水飲んでシャキッと走り回るまで復活をして。そんなちび太を見てかっこいいなと思い、描こうと決めました。きっかけとしては、今年の夏に子どもたちが笑顔になってくれるような思い出を作りたいというチャレンジの一環として「ファミリーコンサート~絵本とうたの世界~」という、親子向けのイベントを開催したんです。その中で絵本の読み聞かせをしようと思った時に、オリジナルのものを作りたいと思って。絵本ってだいたい10枚から20枚なんですけど、ちび太の姿を見てたら手が止まらなくて80枚も描いてしまった。もうパラパラ漫画になってしまうからやめてくださいって言われたくらい(笑)。それくらい熱が乗っかっていたので、目を血走らせながらずっと描いていました。

―この絵本には、どのようなメッセージが込められているのでしょうか?

中川:チビ太が転んでしまって立ち上がれないシーンがあるんですけど、読み聞かせの時に、小さいちびっ子たちもみんなが「頑張れ!」って全力で叫んでくれて、すごく感動したんですよね。頑張っている姿が伝わってるんだって。子どもたちの応援って本当に良い力で前進させてくれると思うし、2020年のオリンピックに向かってもみんながネットの中以外でも繋がってきているのを感じながら、楽しんで描きました。この夏『風といっしょに』のリリースイベントの時に、この絵本を描きながら『「死ぬんじゃねーぞ!!」いじめられている君はゼッタイ悪くない』という本も執筆していて、色々重なって体調を崩しちゃった日があって。その日かなりの数のお客さんが来てくれていて、どうしようと思っていた時に、子どもたちが「しょこたーん!」って叫んでくれて。その声を聞いただけで、それまで薬も効かなかったのに、3時間半のイベントを乗り越える事ができて。このパワー・嬉しさって物理的な何かを超えているなと思ったんです。ヒーローショーで倒れているヒーローが、「がんばれー!」って言われて立ち上がるのってリアルなんだなと体感したんです。子どもたちに助けてもらってばかりなんですけど、この本ではそんな想いを届けられたら良いなと思います。



―絵のお仕事の関連だと、先日放送されたアニメ『ポケットモンスター サン&ムーン』で、中川さんが作画の一部を担当されたことが話題になりました。

中川:アニメーターのところに「中川翔子」の名前が入るなんて思いもよらなかったので、夢というよりもそれを飛び越えたような出来事でした。リーリエ(アニメのメインヒロイン)の一場面を書かせていただいたんですけど、紙と鉛筆で何百枚も描いては一枚ずつめくって確認して。何人もの方が何回も何回も作り直して、そこに声と音が入って、やっと子どもたちに届くんです。その一瞬のためにたくさんの方の数カ月がかかっている。でも、大変なだけじゃなくて、やっぱりそれを凌駕するような好きが乗っかってるんですよ。皆さんめちゃくちゃ忙しいんですけど、ポケモンが好きすぎて、確認のために渡し合う紙にすごいクオリティーのポケモンの絵とかを添えて渡したりしているんですよ。チームワークに思いやりが乗っかっているのを感じました。本当に熱と魂を乗せているからこそ、子どもたちがこんなにも熱狂しているんだなと間近で見る事ができて感動しました。何をするにもその熱を見つけられたら素敵だと思いますし、この体験も語り継げたら良いなと思っています。

―中川さんが夢を叶えていくため大切にしていることは何かありますか?

中川:4年前リリースした「ドリドリ」という曲の歌詞にも書いたんですけれど、夢って見つけた瞬間から未来を輝かせるような力を持つと思うんです。今ってみんなSNSのアカウントがあって、夢の言霊を世界に発する事ができるので、宇宙の歴史を見ても夢が叶いやすいフィーバータイムだと思うんですよ。自分が楽しいことも好きなものも見つけやすいし、それを言ったり書いたり伝えたり、それを誰かが聞いて繋がって。夢って星座みたいに繋がって広がっていくのかなと思うんですよ。ブログに深海が好きって書いたら、2年後に本当に行けることになったり、本当にびっくりしたんですけど(笑)。全部がそうではないけれど、忘れた頃に背中をトントンってやってくれることもあるので、やっぱり死なないで生き延びていてよかったのかもと後から気がつかされました。中学の頃しんどくて悩んで、その穴を埋めるために好きなことで心と耳を塞いでいたんです。でも、それが今ようやく活きてきているので、あの頃の自分には「死ぬんじゃねーぞ!!」って言ってやりたいですね。

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