DIYにこだわるライブイベントが10年目で幕張メッセを即完できた理由

「今回はチケット1万8000枚を絶対に完売させたかった」

―KTRさんは、発想がやんちゃなキッズですよね。「リキッドで10日間やれたら面白くね?」みたいな。

そうなんですよ(笑)。ずっと客目線なのかもしれないですね。この年は10日通し券を販売したんですけど、けっこう売れたんですよ。そういう無理やりなチケッティングの面白さが少しでも伝わる喜びは感じてましたね。

ーそうやって10年間積み重ねてくるなかで、REDLINEの変化を感じることはありましたか。

一番感じたのは、初年度から出てくれているバンドの規模感がどんどん上がってきていることですね。初年度はeggmanを売り切るのが大変だったのに、ここ4、5年で武道館でやれるバンドが増えたり、みなさんの成長は見ていて面白いですね。残念ながら活動休止してしまったバンドも多いんですけど、これまで続けてきたバンドが自分たち自身のプラットフォームをつくっているのが一番嬉しいです。


2015年出演、THE STORY SO FAR(Courtesy of REDLINE)


2013年出演、MY FIRST STORY(Courtesy of REDLINE)

―この10年でシーンが変化していくなか、JMSも変化していくわけですよね。

そうですね。JMSは流通会社として始まって、REDLINEを通じてイベント制作をやるようになったし、自社レーベルやマネージメントを立ち上げるきっかけにもなってるんで。それから10年経って、今はそれぞれが事業部としてしっかり成立しています。

―REDLINEの成長はJMSの成長でもあるんですね。

だと思います。

―となると、10年目となる今年はかなり感慨深いものがありますね。

そうですね。これまでREDLINEはライブハウスで続けてきて、最大規模でもZeppだったし、万人規模のイベントにはしたくなかったんですよね。


Photo by Mitsuru Nishimura


Courtesy of REDLINE


Courtesy of REDLINE


Courtesy of REDLINE

―たしかに。


でも、REDLINEってなんだろうって自分なりに考えていくなかで、やっぱり10周年というのは1度きりだし、今や万人規模のハコでやる力のあるバンドの成長やREDLINEの歴史をより多くの人に伝えたいと思って、幕張メッセに踏み切りました。だから、来年の11年目は初年度みたいな感じにしようかと思っています。

―今年は、誰に声をかけるか相当困ったんじゃないですか。

困りましたねえ。今回はチケット1万8000枚を絶対に完売させたかったので、悩んで悩んだ末に1年前からオファーをさせていただきました。でも、みんな二つ返事でOKをくれたので、ブッキング自体は半年前にはすべて終えてました。

ちなみに、今年のメンツでこれまでREDLINEに出たことがないのはMAN WITH A MISSIONとFOR A REASONだけなんですよ。実は、過去もオファーしたのですが、なかなかスケジュールが合わなかったりしていて。しかも、MAN WITH A MISSIONがインディーズの頃に使っていた流通がJMSだったりして、けっこう繋がりがあるんですよ。それで今回、やっとタイミングがあって出てくれることになったんです。

―デカ箱だから声をかけたわけじゃないということは言っておきたいですね。それにしても、今年もいい意味でいびつな顔触れですね。

いびつですね! “REDLINEなりのリアル”の集大成を見せたかったので。ストリートを感じてほしいというか。

―tricotがいるのもいい。

そうなんですよね。あと、FOR A REASONもめちゃめちゃアンダーグラウンドだけど、幕張メッセで観れるという。

―そして、見事にソールドアウトしました。

はい、即日でした。

―第一の目標をクリアした今、YouTubeでREDLINE出演者関連の動画を上げたりしていますよね。

そうですね。REDLINEの歴史だったり、アーティストと僕との関係をお客さんにも理解してもらったほうが、当日来たときにもっと楽しめると思うんですよ。なので、これからも各バンドに協力してもらって、コンテンツを毎週アップしてます。





―KTRさんとバンドとの関係性がしっかりしてるからこそ、そうやって協力してくれるんでしょうね。

僕は世の中からしたらなんのバックボーンもない人間だし、お客さんも主催者の顔は見えてないと思うんですよ。Twitterでも「なんでこんなバンド呼べるの?」みたいに話題になってたりするし。だから、関係性をしっかり見せるためにこういう企画を思いついたんです。

―KTRさんはビジネスマンとしてもREDLNEを運営しないといけない部分もあるわけですよね。

そうですね。ちゃんとお金が残らないと次につながらないんで。だから、チケットが売れなかったら協賛金を集めるようにしたり、ちゃんと補填するようにはしてます。アーティストにもちゃんとギャラを払いたいし、そうなるとイベント興行の予算だけでは足りないので、協賛企業さんの予算だったり、出資してくれる企業さんの予算も含めてちゃんと考えてます。

―協賛企業への営業もKTRさんがやってるんですか。

はい、自分でやってます。自分が主催してるイベントだから、自分で説明したほうが早いんですよね。

―クソ大変じゃないですか。

大変です。DIYって大変ですね、マジで。しかも、今回はイベンターをいれてないので……。こういうイベントは若い裏方の子にもどんどん仕掛けていってほしいと思います。REDLINEを始めたときは僕も20代だったし。だけど、今、そういう人がいないんですよ。やっぱり、いいスタッフがいないといいカルチャーはつくれないし、いいアーティストも生まれないんですよ。そこは心配ですね。

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