『スター・ウォーズ』シリーズ最終章の監督J.J.エイブラムスが語る「挑戦と敬意」

―昔からのファンの批判には、新しい3部作はオリジナルのヒーローをめぐる話では全くなかったというのがありますが、ルークやレイア、ハンの物語をもっと膨らましたかった思いはあなたの中にありましたか?

確かに彼らの物語にできたかもしれない。でも、彼らの役目は新しいストーリーをサポートすることのように思ったんだ。『スター・ウォーズ』ファンの素晴らしいところは、彼らが非常に気を配っているところだよ。そして、非常にシニカルな人やネガティブすぎる人たちでさえ、作品で描かれたことをほとんど受け入れてくれるんだ。たとえそれが議論のネタになっていてもね。僕から言えることは、今回の3部作の主人公たちがかつて登場したキャラクターと自然に通じ合っているようだったということだ。

―ボブ・アイガーは本の中で、ディズニーにとってルーカス・フィルムの買収が成功かどうかはあなたの作品にかかっていたことから、『フォースの覚醒』は、40億ドルの映画だとあなたに言ったところ、そのことであなたは面白がっていなかった、と書いています。

面白がっていたよ。でも、僕もそう思ったよ。彼やディズニーが投資したことは小さな賭けではないことはわかっていたからね。彼はこのビジネスが成功する証拠が少なくともいくつか欲しくて、この作品に注目していた。僕は彼の賭けにこれ以上感謝できなかった。だから、僕は、誰かのために働く時には必ず、その人のためにいい結果を残したいとだけ思うようになった。それに、それを見るときは、自分のお金で作ったものと思って考え事をする。だから、この作品に気軽に取り組むことは絶対にしなかったし、「40億ドル以上を払って、あの作品を生み出した会社を手に入れた」と思うことも絶対になかった。

―また、ジョージ・ルーカスが『フォースの覚醒』には不満があるということも本の中で明かしています。その当時、それについてどう思いましたか? また今は、それについてどう思いますか?

ジョージには感謝の気持ちだけしかない。彼にとっては複雑なことなんじゃないかな。自分が作り出したもの、自分にとっては赤子同然だったものを誰かに売ると決めることは、小切手に署名して笑顔を見せること以上に複雑な思いだったはずだね。でも、彼はものすごく親切で、とても寛大だった。

彼がやって来て、この新しい映画に取りかかるために最初の会議を開いた際、僕らはいろんなアイデアやストーリーを話し、ジョージからは大切なことを聞いた。それからは、ストーリーの基本的なことを忠実に守るようにすること以外は何もしなかった。そうする努力は難しくはない。繰り返しになるけど、彼は本当に親切なんだ。だから僕は感謝するのみだよ。『フォースの覚醒』が彼にとって今までで最高な映画であることを望んでいるか? その通りだ。僕は彼を優遇したかっただけなんだ。ジョージに深い敬意を抱いているだけなんだ。今もなお、彼が作り出したものに畏敬の念を抱きながら、心から映画に取り組んでいるということを言っておきたい。

―巷で言われていることは、レイのキャラクターはジェダイにあっても異常なほどに才能があるように見えて、ルーク・スカイウォーカーよりも速く物事を学んでいるということです。

そうだね、不気味だよね?(笑)もっともだ。それは偶然ではない。

―『フォースの覚醒』には、1つの星系全体で数十億の人間が殺されてしまう場面がありますが、そのシーンは感情的には全く突き刺さりません。

もともと、その星系が破壊される時に、共和国の惑星にいる登場人物がいたんだ。ただ、話がちょっとズレているように感じた。だから、編集をやり直している際に、もともとあったレイアのシーンをごっそりと省くことになったんだ。

―それが今回の映画で必要になることがわかったということですか?

その通り。不思議なことに、誰かが5ブロック先で殺された場合、その悲劇的なニュースに人は反応する。千人が爆弾で殺された場合、千人であろうと、一万人であろうと、百万人や五十億人であろうと、その人数の多さにほとんど人の頭は働かなくなってしまうんだ。感情的に反応するのは本当に難しい。だから、君の言う通りだ。そういった人たちの死をもっと時間を使って悲しめたらよかったと思う。でも、不思議なことに、話題にする人が増えるほど、人は何かを吸収して感じることが難しくなるんだ。

―面白いことに、ルーカスは『スター・ウォーズ』の1作目で消えていってしまう惑星オルデランのシーンを撮りたがっていましたが、予算上の理由から撮影することはありませんでした。

え、本当に? 彼にはそれは必要なかったよ。それに、当然なことだけど、あの映画は完璧だと言っておきたい。


『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』
12月20日(金)日米同時公開

Translated by Koh Riverfield

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