性犯罪を多数担当した元検事補が今でも後悔する「プレッピー殺人事件」

ロバート・チェンバーズ・Jr.の裁判で、資料を抱えて出廷するリンダ・フェアスタイン氏(Photo by NY Daily News/Getty Images)



人種で大きく異なる容疑者の扱い

だが元地方検事補は異を唱える。『ボクらを見る目』初回の放送後、フェアスタイン氏はウォール・ストリート・ジャーナル紙に記事を寄稿して、かつての自分の職務を弁護した。彼女は記事の中で、デュヴァーネイ監督のミニシリーズは自分の名誉を傷つけ、5人の若者の無実を間違って伝えていると非難した。フェアスタイン氏曰く、たしかに5人はメイリさんをレイプしなかったかもしれないが、彼女が暴動と呼ぶ騒動のさなか、別の罪を犯していた。30人以上の暴徒により、ジョギングをしていたメイリさん以外に8名以上が負傷した、と彼女は書いている。5人はレイプに関しては免罪されるべきだとフェアスタイン氏も認めているが、彼らが働いたとみられる他の罪は見過ごすことはできない、と言う。

5人が犯した罪はさておき、5人とチェンバーズの処遇には雲泥の差がある。チェンバーズには手心が加えられたのに、セントラルパーク・ファイブは――階級と肌の色のせいで――かなり厳しい仕打ちを受けた。現在の大統領ドナルド・トランプ氏は、メイリさんの事件の後に新聞広告まで出して、ニューヨーク州に死刑を採用するよう呼びかけた。トランプ氏が5人の少年らを死刑にせよと公衆を煽り立てていた頃、チェンバーズは収監前夜を家族と共に過ごしていた――しかも、刑務所に送られるときには防弾チョッキまで着せられていた。5人は何年も刑期を務めた後でやっと冤罪が認められたが、チェンバーズは最長15年の刑期を全うした後(素行が良かったことはなかった)、2008年に麻薬容疑でブタ箱に逆戻りした。2024年までは収監される予定だ。

セントラルパーク・ファイブ事件と並べてみると、『The Preppy Murder』は苛立ちを募らせる――それは事件の性質のせいだけではない。フェアスタイン氏がヒーローでも、悪役でもないのは確かだが、ただ彼女が両方の事件に関与していた事実は、刑事事件における有色人種と白人の処遇の違いをはっきりと浮彫りにした。マギー・ヒッキー記者もドキュメンタリーの中でこう回想している。「街の反対側では1日に殺人が4~5件も起きているのに、私たちは『どうせ麻薬絡みだろ』と言って、全く気にも留めません。でも1980年代に、セントラルパークで白人の身に何かが起こったとなれば、誰もが注目したんです」。その後の予兆だったのかと思うと、なんとも気味が悪い――絵に描いたような偽善に、メディアも法制度も未だ捕らわれているのだから。

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE