「助けて」を言えない社会の方に問題はないか? 他人に助けを求める「援助希求行動」

音楽学校の講師でもあり、産業カウンセラーの資格も持つ手島将彦の連載第2回(Photo by Pixabay)



『「助けて」が言えない SOSを出さない人に支援者は何ができるか』(松本俊彦編・日本評論社)では、「助けて」と言わせることへの違和感についても指摘されています。この中で熊谷晋一郎氏は、「弱さをオープンにして『助けて』と言う義務が個人の側にあるといった新しい自己責任論になってしまいます」と言い、また、岩室紳也氏は「実は『助けて』と言えないうちに助けてもらっている関係ができあがっていることが重要なのではないかということです。つまり、気がついたらつながっている関係性、依存先の存在が大事だと思うのです。残念ながら、今の世の中はそうなっていなくて、歪んだ自立や、独り立ちを強要する社会になっているのではないでしょうか。」と警鐘を鳴らしています。

やはり、生きていく上で誰かに何かの不具合が生じたとき、それは必ずしもその個人の問題ではなく、社会の問題なのではないかと考えてみることが大切です。弱さを見せられる社会ではないのに、弱さをオープンにしろ、というのはおかしな話です。私たちは援助希求行動を当事者の責任にするのではなく、社会自体を「助けてと言える社会」にしていくべきなのだと思います。そのためにも、様々なアーティストたちから発せられるメッセージや表現を、困っている当事者にだけ向けたものと受け取るのではなく、この社会に対しても向けられているものなのだと考えたいです。

参照

ビリー・アイリッシュ、メンタルヘルスを語る「助けが必要だからって、弱いわけじゃない」Rolling Stone Althea Legaspi 2019.05.24
https://rollingstonejapan.com/articles/detail/30961

ビリー・アイリッシュに学ぶメンタルヘルスの大切さ i-D 30 July 2019.
https://i-d.vice.com/jp/article/3k3xdv/billie-eilish-tells-us-importance-of-mentalhealth

プロディジー、メンタル・ヘルスに関するメッセージをインスタグラムに寄せる NME 2019.5.8
https://nme-jp.com/news/72503/

Michelle Williams Twitter
https://twitter.com/realmichellew/status/1019351898418176000?s=21

「助けて」が言えない SOSを出さない人に支援者は何ができるか』(松本俊彦編・日本評論社)



<書籍情報>



手島将彦
『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』

発売元:SW
発売日:2019年9月20日(金)
224ページ ソフトカバー並製
本体定価:1500円(税抜)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909877029

本田秀夫(精神科医)コメント
個性的であることが評価される一方で、産業として成立することも求められるアーティストたち。すぐれた作品を出す一方で、私生活ではさまざまな苦悩を経験する人も多い。この本は、個性を生かしながら生活上の問題の解決をはかるためのカウンセリングについて書かれている。アーティスト/音楽学校教師/産業カウンセラーの顔をもつ手島将彦氏による、説得力のある論考である。

手島将彦
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。2000年代には年間100本以上のライブを観て、自らマンスリー・ライヴ・イベントを主催し、数々のアーティストを育成・輩出する。また、2016年には『なぜアーティストは生きづらいのか~個性的すぎる才能の活かし方』(リットーミュージック)を精神科医の本田秀夫氏と共著で出版。Amazonの音楽一般分野で1位を獲得するなど、大きな反響を得る。保育士資格保持者であり、産業カウンセラーでもある。

Official HP
https://teshimamasahiko.com/

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