自慰を禁じるインターネット・ミームに隠された「極右」の痕跡

さらに過激な極右思想

こうした極右の反オナニー哲学をさらに過激に推し進めているのがデヴィッド・デューク氏だ。K.K.K.の元リーダーである彼は、ユダヤ人がポルノ業界を牛耳って、ポルノを媒介に白人男性を支配しているという陰謀論を展開している。暗号メッセージアプリTelegramの極右系スレッドには、この手の内容がかなり蔓延している。「ユダヤ人はポルノ業界の大半を支配しているばかりか、男性を手懐けて骨抜きにするために、異教徒と手を組んで射精の悪習をはびこらせている」というコメントもある。また別のコメントはNo Nut Novemberチャレンジに失敗したユーザーをからかうPornhubの人気ツイートをシェアして、「ユダヤ人は数百万人の理性を汚し、お前をバカにした」と書いている(Pornhubの親会社はカナダの企業MindGeekで、CEOフェラス・アントゥーン氏はユダヤ人ではないと思われるが、4chanの数々の/pol/スレッドではユダヤ人ではないかと臆測されている)。

こうした反ユダヤ主義は、しばしばホモフォビアや人種差別的なコメントとセットで現れることが多い。この手のスレッドでは、ヘテロセクシャル向けポルノでマスタベーションする男性は、他の男のペニスに欲情しているからゲイだ、と中傷するコメントをしばしば見かける(件のペニスがヴァギナに挿入されているのだが)。メインストリームのポルノでは白人女性が黒人男性と絡むシーンが多いため、異人種間のポルノは意図的に白人女性を白人男性と生殖行為から遠ざけ、有色人種に向かわせている、というような、悪意むき出しの人種差別的な主張も見受けられる。

一見するとこうした一連の自慰反対運動は、白人男性を洗脳して骨抜きにしようとする巨大ポルノ産業に立ち向かっているように見えるが、皮肉なことに、歴史的にはファシズムの連中が社会を支配するための道具として利用してきた。自慰に対する文化的レッテルに、ほぼ誰でも自慰をするという事実が相まって、大勢の男性たちがほぼ間違いなく「ひそかに羞恥心を募らせる」ようになる、とレイ博士は言う。「そのため、男性は洗脳や社会支配の影響を受けやすくなります」 その例として、博士は1930年代のドイツの国家社会党(ナチス)がヒトラー青年団のメンバーの自慰を厳しく禁じた事実を挙げた。反ポルノ、反マスタベーション運動の参加者は異性愛者の若者男性が多いため、一部の極右系がメンバー勧誘に想的な場であるとみなす可能性もある。事実、No Nut Novemberのようなものは表面上ジョークに見えることから、「興味をそそる表向きの看板として機能する一方、より邪悪な中傷活動の深みへ引きずり込む勧誘の手口となっているようです」とレイ博士。

Translated by Akiko Kato

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