自慰を禁じるインターネット・ミームに隠された「極右」の痕跡

無邪気なミームとして見逃せなくなりつつあるCoome

だとしても、NoFapの背景にある基本的な思想――No Nut Novemberにもある程度当てはまるものだが――と極右思想の間に、かなり重なる部分があるという事実を無視するわけにはいくまい。極右思想は次第に禁欲の原則を取り入れるようになっているのだ。このチャレンジはポルノからの脱却に関連しているため、運動参加者の中にはさらに一歩踏み込んで、アダルト業界のパフォーマーにソーシャルメディア上で嫌がらせする者もいる。「昔は(No Nut Novemberといえば)いつも、『ちょっと見てよ、一部の人たちがまたくだらないことに参加してる』という感じでした」と言うのは、アダルト業界のパフォーマー兼ディレクターのケイシー・カルヴァート氏。「今年は(業界内で)噂になってます。『実はNo Nut Novemberは極右とつながっているらしい、ハハハと笑い飛ばすわけにはいかないんじゃないか?』 って」

新種のミームCoomerがこうした現象をさらに浮彫にしている。Coomerとは、ひげを生やした小汚い、見るからに変わり者で、どこかユダヤ人っぽい特徴を備えた白のランニング姿の男性のことだ。その隣には「政治についてはちんぷんかんぷん」「見事なまでに鍛え抜かれた右腕(この筋肉を見よ)」「NoFapなんて聞いたこともない」といった説明文が添えられている。

この1年、4chanではよく見かけたが、ポルノ動画サイトxHamsterのアレックス・ホーキンス副社長曰く、同社のTwitterフィードにこうしたリプライが見られるようになったのは9月頃、ちょうど大統領選立候補者アンドリュー・ヤン氏がポルノへのアクセスを制限する内容のツイートを投稿した時からだという。最初は「我々も真意が掴めず、ただ面白がっていました」と、ホーキンス氏はローリングストーン誌に語った。すると10月後半TeapodLadと名乗るユーザーが、No Nut Novemberに失敗したらアバターをCoomerに変えよう、と呼びかけるTwitterキャンペーンを展開したために、再びCoomerが顔を出した。スウェーデンのユーチューバーPewDiePieが最近YouTubeの動画でキャンペーンを支持すると、極右ユーチューバーのポール・ジョセフ・ワトソン氏も同様に支持した。彼はマイロ・ヤノポルス氏やアレックス・ジョーンズ氏らと肩を並べる過激主義者として有名で、同様に、Facebookから出入り禁止を食らっている。「No Nut NovemberやCoomerのミームには、もっと深い意味があるんだ」と、同氏はツイートした。「ポルノは悪だ。文字通り脳みそがイカれて、勃起不全になる。さあ誓え。決してCoomerにはなるな」

Translated by Akiko Kato

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