『シャイニング』の続編『ドクター・スリープ』こだわりの音楽制作秘話

ニュートン・ブラザーズには、オーバールックのモンスターとトゥルー・ノットのモンスターのキャラクターを、音楽で区別する任務が負わされていた。オーバールックのモンスターを音楽で表現するために二人は『シャイニング』を見返して、その中に登場する1400年代のグレゴリオ聖歌を発見したのである。「映画の邪魔をすることも、クレージーな音楽を作ることも嫌だった。だから、オーバールックの最後のシーンだけにこの音楽を使ったんだ。シンプルな聖歌を自分たち風にアレンジしてね」とアンディは語る。

トゥルー・ノットを表す音楽では、複数の楽器を組み合わせて得体のしれない楽器の音を作っている。「彼らは時代がかった存在で、ちょっとジプシーっぽくもある。彼らは至る所に移動しながら、その途中で物を手に入れて旅を続けているんだ。その雰囲気を音楽にも反映させたかった。そこで、特定の国や土地ではなくて、いろいろな文化圏の打楽器をランダムに選んで組み合わせてみたんだよ」と、テイラーが述べた。

トゥルー・ノットのボス、ローズ・ザ・ハット(レベッカ・ファーガソン)の音楽では、ハーディ・グランデという7.5メートルの木製サウンドボックスを使い、リズムの安定しない心臓の鼓動を組み合わせた。テイラーは「この不整脈風の心拍が、どうしても動かずにはいられない強迫観念的な要素を加えた」と明かした。

また、ダニー(ユアン・マクレガー)を表す音楽で、二人はサンフランシスコにある27.5メールのウィンドハープを使い、徐々に制御不能に陥って暴走するダニーの感情を表している。アンディが次のように説明した。「このウィンドハープも人間が容易に制御できる楽器じゃないというのが気に入った。つまり、これは人間のエゴがまったくない楽器なんだ。だってこの楽器を左右できるのはお天気だけだから」

ニュートン・ブラザーズに「恐怖を煽る音楽に最適な方程式というものがあるか」とたずねてみた。すると二人はしばらく無口になり考え込んでから、テイラーがこう答えた。「僕が恐怖を感じるのは、何かが大きく失われたときで、感情が完全に壊れた感覚を覚える瞬間だ。そして、さらに恐怖が煽られるのは、息苦しくなるほどの緊張感や沈黙があって、その後に聞く者の感覚を壊すほどのインパクトを持つ音楽が突然流れるときだね」と。



Translated by Miki Nakayama

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