アメリカにフェンタニルを密輸していた罪で有罪となった中国人男性に、死刑判決が下された。ニューヨーク・タイムズ紙が報じている。
劉勇被告は、アメリカ向けにフェンタニルの製造・密輸を行う犯罪組織を取り仕切っていた。客はインターネットから“ダイアナ”と呼ばれる売人を通して注文することができた。ただし、劉被告の死刑判決に2年間の執行猶予が付いており、後日終身刑に変更される可能性もある。他の8人の被告も有罪判決を受け、それぞれ懲役6か月から終身刑の判決を受けた。
今回の捜査は、フェンタニルおよびオピオイド危機に対して米中が協力して捜査に乗り出した稀に見るケースとなった。世界に流通するフェンタニルの大半は中国産と見られ、アメリカでフェンタニルの過剰摂取による死亡事故が相次いだことから、米中間の論争の的となっていた。ドナルド・トランプ大統領も、アメリカへの麻薬流入に対して中国政府が十分な措置を取っていないと非難していた。
捜査は2017年8月、麻薬取締局がニューオーリンズで逮捕した一件から始まり、最終的に上海と江蘇省にあるラボと2カ所の配送センターを突き止めた。劉被告は組織全体を取り仕切っていたとされる。施設を閉鎖した際、当局はおよそ26ポンド(約12キロ)のフェンタニルを押収したとのことだ。またこの捜査の後、ニューヨーク州とオレゴン州でも逮捕者が出て起訴された。
習近平国家主席が昨年トランプ大統領に公約した通り、中国政府は今年4月、あらゆる類のフェンタニルを正式に禁止した。中国ではすでに20種類以上のフェンタニルおよび前駆物質が規制薬物に分類されていたが、改正以前の法律が曖昧だったため、中国の製造業者はオピオイドに少しばかり手を加え、規制対象にならない薬物を製造することが可能だった。