鮎川誠がシナロケ新作でカバーにこだわった理由「ロケッツの真ん中を貫くロック原体験」

シーナ&ロケッツ(Courtesy of JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント)

シーナ&ロケッツが2020年2月14日にニューアルバム『LIVE FOR TODAY!』をリリースする。同作は、2014年リリースのアルバム『ROKKET RIDE』のレコーディング時に録音され未収録だった、シーナのラスト・レコーディングでのカバー曲7曲を含む、バンドの音楽人生を体現する初のライフタイム・カバー・アルバムだ。そんなシナロケの軌跡を、音楽ライターの鳥井賀句が綴る。

鮎川誠に会うたびにいつも思うことは、この人は本当に心の底からロックが好きで、100%のロック人生を生きている人だなあ……ということだ。もちろんミュージシャンとしてギターを弾きまくり歌っている姿はロックン・ローラーそのものだが、オフ・ステージで会ったり、インタビューをしている時でも、彼はいつも自分の今夢中になっているロックのレコードのことや、自分の大好きなミュージシャンの話題を本当にうれしそうに、語らずにはいられないといった表情で目を輝かせながら、熱く語ってくれる。彼はそこらのロック評論家なんかよりよっぽどロックやその周辺の音楽に詳しいし、その神髄まで掘り下げて聴いている。

鮎川誠もプロ・ミュージシャンになる前はロック好きの少年であり、ラジオから流れてくるビートルズやストーンズ、キンクス等を夢中になって聴いて、その曲のギター・コードを必死で練習したりしていた音楽少年だった。そして現在71歳を迎えた今も、鮎川誠のマインドはあの日のロック少年時代と少しも変わらずにロックを愛し続け、今も夢中になっている。そう、ストーンズが「イッツ・オンリー・ロックン・ロール」で歌った「オールド・ボーイ」という歌詞があったが、鮎川誠は今も少年の心を持ち続けるオールド・ボーイなのだ。

1978年にシーナ&ロケッツがメジャーデビューしてから2020年で42周年を迎える。彼らはそのデビュー時の1stアルバム『#1』からストーンズもカバーしたチャック・ベリーの「カモン」を、2ndアルバムでアルファからの第一弾に当たる『真空パック』ではキンクスの「ユー・リアリー・ゴット・ミー」やジェームス・ブラウンの「アイ・フィール・グッド」などをカバーし、オリジナル曲と共に自分たちが好きな海外のロックやリズム&ブルースやブルース等の曲を紹介してきた。猫も杓子も日本語のオリジナルをやるのがブームになっていた時でも、もちろん「ユー・メイ・ドリーム」や「スイート・インスピレーション」等々のオリジナル・ヒットは飛ばしていたが、彼らは常に自分たちのルーツである海外のロック・アーティストのカバーをアルバムに入れて敬意を表し、それをファンにも伝えようとしてきた。日本のロックのファンとしてシナロケを聴き始めたが、彼らがアルバムやライブでカバーする海外の曲を聴いて、ストーンズやキンクス等の洋楽に目覚めたというファンも多いだろう。

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