掟ポルシェがスタークローラーを愛する理由「人間離れした感じがビンビンに出ている」

『Devour You』のカラフルな変化

—アロウ以外のメンバーについてはどうでしょう?

掟:やっぱり大きいのは、曲を作っているヘンリー・キャッシュ(Gt)ですよね。彼がものすごく才能があるんですよ。ポピュラリティを持ったロックンロールを作る才能っていうか。スタークローラーは最近、Setlist.fmのインタビューで、今までの印象に残っているコンサートを話していて。ドラムのオースティン(・スミス)はソニック・ユース、アロウちゃんはオジーで、ヘンリーはホワイト・ストライプスのボーカルの人……なんていうんだっけ?

—ジャック・ホワイト。

掟:そうだそうだ。ホワイト・ストライプスも根底にあるものはブルースだったりするじゃないですか。スタークローラーもバンドを始めた当初よりも、もっと自分たちのオリジネーション、ロックの根源的な部分に近づいていってるんだなと思いました。それに、ヘンリーも見た目がいいですしね。このバンドをやっていくために学校も中退して。


ヘンリーが愛用ファズを解説している動画

—音楽オタクっぽいところもあるみたいですね。

掟:ステージでも3弦ギターを使ったりしてますしね。「なんで3弦なの?」って訊いたら、「Why not?」(いいじゃん!)って言ってましたよ。あと、テレキャスのボディの裏にステッカーが貼ってあって。なんて書いてあるんだろうと思ったら「Boobies make me smile」、おっぱいは僕を笑顔にさせる!

—ひどい(笑)。

掟:中野ブロードウェイのお土産屋さんで売ってる、ひどい文言のグッズみたいな。こんなのでまだ喜べるんだっていう(笑)。

—でも、曲作りのセンスはたしかなものがある。

掟:彼の作る音楽って当初はストゥージズだとか、もう少しダークなパンクロックの雰囲気を持っていて。俺としてはマッドハニーと通じるものを感じていたんですけど、新しいアルバムはかなりカラフルになっていましたね。


バンドのYouTube最多視聴回数を記録している、1stアルバム『Starcrawler』収録曲「I Love LA」


『Devour You』のリードシングル「Hollywood Ending」

—デビューアルバムは金太郎飴っぽい内容でしたが『Devour You』は曲のレパートリーが広がりましたね。

掟:メロディのしっかりした「これ普通に売れちゃうんじゃないの?」みたいな曲もあれば、ちゃんとテンポの速い曲もあるし、ライブ映えするダークな曲もある。これまでのファン層とは違うところに訴えかけているような曲も多いですよね。今は意図的にいろんなタイプの曲を入れたいのかなって。1stアルバムは以前からプレイしてた曲の寄せ集めで出来ちゃうものですけど、2ndになると一からアルバムを作ろうとして作っているわけで。そういうバリエーションを持たせたかったんでしょう。

—前作はほぼ一発録りだったのに対し、ニューアルバムは音楽的にも作り込まれていて。変に丸くなったわけでもないし、ワンパターンを繰り返すわけでもない。

掟:ロックンロールの基本的なところも押さえつつ、カントリー的な曲も入ったりしていて。ただ思うんですけど、血へどを吐いてダークな曲を歌う人たちって、ブラックメタルとかで山ほどいるじゃないですか。でも、「No More Pennies」みたいなカントリー&ウェスタンっぽい曲でやってたら、怖いっちゃ怖いですよね? これはこれでおもしろいんじゃないかな。そういう落差もこのアルバムによって生まれそう。2ndアルバムとしては、これで正解なんじゃないですか。ストレートな感じのロックアルバムだと思いますね。



—ジャケットは前作に引き続き、アロウのお母さんこと写真家のオータム・デ・ワイルドが撮影したそうです。

掟:股間の真ん中にバラっていう。実の娘になんてディレクションしてんだってね(笑)。やっぱりお母さんも身長が高くて、一昔前のスーパーモデルみたいな体型だったらしいです。おじいさんも有名な写真家でジミヘンとかを撮られていて、お父さんはバンドマンだし、ロックンロールをやるうえではサラブレッドな家柄ですよ。「お母さんと一緒に仕事するの恥ずかしくない?」ってインタビューで訊いたら、「何言ってんの?」みたいな感じ。そこはもう、アメリカ人と日本人の違いなんでしょう。俺だったら自分の母ちゃんと一緒に仕事したくないけどなー(笑)。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE