「ユダ公」「混血」と罵る白人至上主義者のアカウントが今も消えない理由

右派勢力(オルト・ライト)のリーダー、リチャード・スペンサー氏(Photo by AP/Shutterstock)

米現地時間11月4日、白人至上主義者のリチャード・スペンサー氏のものとみられる極秘音声が、右派勢力(オルト・ライト)の仲間の一人マイロ・ヤノプルス氏のYouTubeチャンネルで公開された。

2017年夏に録画されたとみられる映像の中でスペンサー氏は、抗議デモの参加者1名が死亡したシャーロビルの極右連合集会Unite the Rightに言及しながら、人種や民族を侮辱する言葉を叫んでいた。

「我々はこの場所に何百回も戻ってくる」と、スペンサー氏と思しき人物の声。明らかにシャーロッツビルのことを指している。「本当に腹立たしい。この連中には心底腹が立つ」。やがて声の主はシャーロッツビルの抗議デモ参加者を「チビのユダ公」「混血野郎」呼ばわりし、「あいつらクソどもは私の祖先の奴隷だった」と喚いた。

Twitterでは問題の音声が広く拡散したが、これぞスペンサー氏のイメージの裏に白人至上主義的な考えが潜んでいるなによりの証拠で、彼の本性がついに暴かれたという意見が大半だった(スペンサー氏は音声の真偽に関して公式声明を出していないが、代わりに「Never Apologize(絶対に謝罪しない)」というタイトルで、極右コメンテイターのジョナサン・ボウデン氏のスピーチ音声をツイートした。ローリングストーン誌のコメント取材依頼に対し、スペンサー氏からの返答はなかった)。

オルト・ライトの重要人物の1人、スペンサー氏が最初に頭角を現したのは、民族純化やいわゆる平和的民族浄化といった白人ナショナリストの原理への支持がきっかけだった。だが彼は、確かな学歴と生真面目な風貌のおかげで、メインストリームでもそこそこ顔が知られるようになった点で、他の白人至上主義者とは一線を画している。その結果、多くのメインストリームのメディアがスペンサー氏を情報源に起用し、彼に主張の場を与えてしまった。

極右主義を研究する専門家らも、ヤノプルス氏がリークした音声は必ずしもあの場の雰囲気を非難しているわけではなく、オルト・ライトのトランプ支持派と、スペンサー氏率いる過激な連中との間で高まりつつある内部抗争の副産物だと指摘している。

スペンサー氏は「オルト・ライトは2020年大統領選挙でトランプ氏と決別すべきだ」と主張しているからだ。この辺の経緯は、アナーキスト系ニュースサイトIt’s Going Downのスレッドで詳しく説明されている。同サイトの編集者ジェームズ・アンダーソン氏によれば、スペンサー氏とヤノプルス氏が親密だった時期もあるようだが、だとしても今回の音声公開はヤノプルス氏の心変わりではなく、むしろ彼が中指を立てたとみるのがふさわしい。だが今回の件で、別の問題も持ち上がった。SNSがヘイトスピーチの制限にどこまで責任を取るべきかという議論が高まる中、そもそも自他ともに認める人種差別主義者のスペンサー氏のアカウントが、なぜいまだにTwitter上で健在なのだろうか?

Translated by Akiko Kato

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