「ユダ公」「混血」と罵る白人至上主義者のアカウントが今も消えない理由

音声をリークしたのは影響力を保ち続けようとしたから?

そうした戦略は、スペンサー氏のこざっぱりしたメディアでのイメージとまさしく一致する。そのイメージゆえに、メインストリームのメディアは彼を白人至上主義の「粋な」代弁者と位置づけ、アトランティック紙のような名だたる出版社さえも、極右活動のシンボルとして彼の特集を組んだ。「こうした報道にいら立ちを覚える理由のひとつは、(極右グループ内で)話し合われている内容が、陳腐な見栄えのよさの陰に隠れてあやふやになってしまうことです」とグレイヴス氏は指摘する。たとえ「話し合いの中心になっていることが、まさに今回の音声で明るみになった内容だとしても」

スペンサー氏は、Twitterの利用規約に違反して追放された元極右同志がたどった運命からも教訓を学んだようだ。とくにヤノプルス氏は、Twitterから除外対象とされたために収入が激減したという不満をあからさまにし、その後は主に暗号化メッセージアプリTelegramで投稿を続けていた。現在、極右活動内でのヤノプルス氏の「株はがた落ち」で、音声をリークしたのは「影響力を保ち続けようとする、ひねくれた個人の小細工です」と、グレイヴス氏は言う。

ヤノプルス氏がオルト・ライトの内輪もめをエスカレートさせようとしただけでなく、Twitterの検閲ポリシーが恣意的であることを強調するために、スペンサー氏とおぼしき音声をリークした可能性もある(確かに、ヤノプルス氏は最初に音声を投稿したサイトFreeSpeech.tvで、元K.K.K.の導師デーヴィッド・デューク氏もTwitterアカウントを持っていることを指摘し、この点を暗に仄めかしている)。だが、ヤノプルス氏自身の意図がこの主張をまさに裏付けているとしても、そう感じているのは彼だけではない。2020年の大統領選挙が間近に迫る中、偽情報やヘイトスピーチの推奨に対するソーシャルメディアの役回りに詮索の目がますます向けられている。

先月、Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏は下院議会の公聴会で、政治広告の事実確認を行わないという決定を弁護した。これに対抗するかのように、Twitterはあらゆる政治広告を禁止する方針を打ち出した。左派からは、プラットフォーム上の有害な対話を撲滅するうえで正しい一歩を踏み出したと絶賛された――だがごく一部の人々も指摘しているように、有害な広告はTwitterにとって大した問題ではない。むしろ、スペンサー氏のような有害なユーザーこそが問題なのだ。

このような議論の真っただ中、各プラットフォームは保守派に偏見的だというレッテルを張られまいとして(何を隠そう、大統領自らこうした主張を扇動している)、ソーシャルメディアはこうしたコンテンツを規制するべきだという主張を交わしている。「我々は、ソーシャルメディア企業がメディア環境や規制の枠組みの中でどうあるべきか、結論を下すべき時期を迎えています。現在各プラットフォームは(通信品位法第230項に基づく)安全圏を失わないよう、細心の注意を払っているのです」と言ってグライゲル助教授は、プラットフォーム上のコンテンツに対するIT企業の責任をおおむね免除する法律に言及した。

「ユダ公」「混血」と罵ることは、ヘイトグループとの親和性の証だと見なされないのだろうか? この点についてローリングストーン誌はTwitterにコメント取材を申し出たが、いまだ返答はない。同社が反保守派だと叩かれるのを恐れる限り、スペンサー氏のTwitterアカウントは今日もまた存在することになりそうだ。


Translated by Akiko Kato

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