「Yamaha Acoustic Mind 2019」レポート、アコースティックの可能性を広げた一夜

続いて磯貝サイモンが登壇。4歳の頃からヤマハ音楽教室に通い、自身のギターもピアノもヤマハ製を使用しているという大のヤマハファンである磯貝。「ハートマーク」とTikTokで多く使用され話題になっている「CRAZY FOR YOU」の2曲を披露した。ふくよかなギターサウンドを体現できるモデルLJ36を使用しているためか、力強くギターをかき鳴らしてもアルペジオを弾いてみても、まろやかなサウンドになっている。加えて、会場の屋根の高さが一層アコースティックサウンドの音の広がり方を魅力的にしており、ホール会場全体を包み込む優しさのあるサウンドとなっていた。ISEKIとの2人でのセッションも始まり、未発表曲「暗闇にセイハロー」と「ようこそジャパリパークへ」も1コーラス演奏した。



その後はAnlyがステージに登場。Anlyのライブパフォーマンスでは、本人の伸びのある歌唱力はもちろんのこと、今年の夏に発売された最新モデル「STORIA」のキレがあり、鳴りの良さが際立つサウンドを響かせた。楽曲「Venus」では、ルーパーのエフェクターを多用し、ギターフレーズや自身の歌声、更にスラム奏法でボディを叩いたパーカッションを重ねて、一人で多重サウンドを体現して見せた。デジタルサウンドや技術が音楽業界でも主流になっている中で、楽器そのものの音を活かすアコースティックに上手くデジタル要素を取り入れた演奏が、アコースティックのステージングに伴う制約を取り払い、可能性を広げていく近代性も感じられた。



続いてのセッションシーンでは、Anlyと磯貝、ISEKIの3人で「Parade」を、更に大石も呼んで4人でキマグレンの名曲「LIFE」を演奏する。ここまでのステージでギターの紹介や各々のプレイを見てきたことで、アコースティックという楽器の個体差やプレイの多様さに注目して聴き込んでしまう。情熱的なアルペジオとかき鳴らすバッキングのISEKI、まとまったテクニックとまろやかさを押し出したプレイの磯崎サイモン、近代的な技法も取り入れてアコースティックの可能性を感じさせるAnly、そして変則的で指板上を自在に動き回る大石昌良、イベントタイトル通りのそれぞれのアコースティックマインドがぶつかり合う姿に筆者は心を打たれた。会場からも手拍子と歓声が止まらなかった。

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