捜査ツールはSNSとポッドキャスト、一般市民が殺人事件解決に貢献

一般市民に正しい犯罪捜査の手ほどきをするビリー・ジェンセン氏(Photo by Robyn Von Swank)



ジェンソン氏が市民探偵の可能性を最大限に引き出す

ホールズ氏はゴールデンステートキラー事件の捜査に携わっていた時、素人探偵からの無駄な情報提供に悩まされた経験を持つ。「ゴールデンステートキラーの事件では、仮説を立てたとか容疑者がわかったとかいう人々にしょっちゅう煩わされていました」とホールズ氏。「自分の推理と捜査方法に徹するのが大変でした」 だが同時に、市民が貴重な技能を発揮する場合があることも知っている。「そこでビリーの出番です」と彼は言う。「彼は、ソーシャルメディアで警察当局が提供した情報を活用する術を心得ていました。そして、非常に的を得たやり方で情報をクラウドソーシングしたんです。それに彼は忙しい警察の邪魔もしませんしね」

さらにここで登場するのが『The Murder Squad』。リスナーを優れたアマチュア捜査官に訓練するポッドキャストだ。未解決事件を毎週1件紹介し、リスナーに有益な情報をオンラインで提供するよう呼びかける――写真から身元不明の被害者を特定したり、発見されていない遺体の在処について意見交換したりするのだ。ホールズ氏の考えでは、一般市民がすでに勝手にネット上で事件を掘り下げているなら、彼とジェンセン氏がルールを設けて、本当に警察当局の役に立つように捜査させた方がいいだろう。

「我々はこうした情報を発信して、その手の人々を集中させようとしているんです」とホールズ氏。ジェンソン氏の願いは、常にそうだが、未解決事件が解決されること。そして真の犯罪ファンのコミュニティの手で、事件が解決されることを願っている。「十分な数の人々が友人や家族と協力してくれれば、いくつかは解決できると思います」



初めてのオンライン捜査で、ジェンソン氏は即座に大手柄を立てた。「ビギナーズラック」と彼は呼んでいる。ゲインズ氏の犯人捜索用にFacebookページを立ち上げたその夜、彼はリバーノースに絞った35ドルの広告費を払って、Twitterに短い情報提供の募集を投稿した。すると、あるユーザーが犯人のクローズアップ画像を添付して返信してきた。ジェンソン氏は、オーディオブックで探偵たちにアドバイスしているように、「相手の気が変わったり、熱が冷めたりしないうちに」すぐさま返事を書いた。1週間で15回ほどやり取りするうちに、そのTwitterユーザーを説得してさらに情報を引き出した。最終的に手に入れた情報は、待っただけの甲斐があるものだった。それは犯行現場で撮影されたSnapchatの動画で、犯人は意識を失ったゲインズ氏に向かって「立て」と叫んでいた。ジェンセン氏は明瞭な画像をもとに、イリノイ州が公開している犯罪者の顔写真3000枚と一致するものはないか検索した。

犯罪現場に出向いて、男を見たことがあるかと聞き込みまでした。そのうち1人が男に見覚えがあると言った。ゲインズを殴った男を特定したと確信するや、ジェンセン氏はシカゴ警察にとっての「きしむ車輪」となり、決してプライベートとは言えない容疑者のFacebookページを監視して、警察に男の所在を逐一報告した。警察が自分の意見に耳を傾けていたのか自信がない時もあったが、最終的に警察は逮捕にこぎつけた。マーカス・ムーアは加重暴行で有罪を認め、4年半の禁固刑を言い渡された(勾留期間も含め、2年服役したあと仮釈放された)。殺人罪での起訴ではなかったが、9カ月に渡る捜査の末にジェンセン氏は最初の事件を解決した。

彼は著書の中で「天にも上る心地」だったと描写しているが、それもほんの一瞬だった。すぐに彼はもっと事件を解決したくなった。「殺人犯は他にもまだ野放しでした。法の手を逃れただけでなく、誰かの命を奪う権利が自分にはあるのだと思い込み、好き勝手に殺人を犯そうとしていました」と本人。「彼らが奪ったもの、それは言わずもがな、1人の人間です――夕日を眺め、頬に風を感じ、刈られたばかりの芝の匂いを吸い込むこともできたでしょう。ボウイの曲が好きだったかもしれません。お金をためて、自分でホットファッジサンデーを買うつもりだったかもしれない。そうしたことが、僕らを人間らしくしてくれます。そしてある日誰かが忍び寄ってきて、それらをすべて奪い去って行ったのです」

ジェンソン氏はこの3年間、空いた時間と労力のほぼ全てを犯罪捜査のクラウドソーシングに注ぎこんできた。それによってナッシュヴィルのテディ・グラセット射殺事件の逃亡犯が発見されるなど、事件解決や逮捕に至る場合もある。2016年にブルックリンの公園でジェニファー・コーエンさんが殴打されて死亡した事件のように、現在進行中の捜査もある。時には投稿して、数カ月間課金することもある。広告費で借金が2万ドルに膨れ上がった時も、彼は捜査を諦めなかった。現在およそ25件の捜査を抱えているが、ジェンセン氏は今もゲインズ事件とほぼ同じ手法を貫いている。もっとも、最近ではInstagramも使うようになったが。「5年前に思いつかなかったのが悔やまれます」と本人。「なにしろ当時はFacebookが全盛期でしたからね」

Translated by Akiko Kato

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